ろりすかシリーズvol.12
「こぼれた水、あふれた水」
烏丸ちとせ(「ギャラクシーエンジェル」より)
17歳 トランスバール皇国軍
体型 身長:157cm 3サイズ(推定):80-58-81
黒髪が印象的な大和撫子。
病気がちでずっと入院していたが、友達欲しさに興味のあったエンジェル隊に入隊……のはずがいろいろなすれ違いで対立関係に。エンジェル隊に友情と憎しみを抱く二面性三面性のある性格。
(あぁ……こんなに美味しいケーキをおなか一杯食べられるなんて……幸せ…………)
エンジェル隊の一員であるミルフィーユの部屋。そこに「お友達」として招かれたちとせは、山と積まれたケーキをご馳走になっていた。
比喩ではない。
文字通り山と積まれたホールケーキを、一つたりとも残さぬ勢いで食べつづけているのである。
「美味しいです、ミルフィーユさん…………」
「嬉しい〜。まだまだあるから、どんどん食べてくださいねちとせさん」
さらに十数個のケーキが追加される。
「よ、よろしいんですか、こんなにいただいてしまって?」
遠慮こそすれ、ちとせはその量に驚くことはなかった。
物腰やわらかで清楚可憐な少女に見えるが、実は彼女は「大食いなら右に出るものはいない」というほどの胃袋の持ち主なのであった。
以前別の場所(別次元?)で同じエンジェル隊の蘭花、フォルテとカレーの大食い対決をした時、息一つ乱さずその勝負を制してしまったのが彼女である。カロリー消費量最大ともいえる体育会系の蘭花、男勝りの食欲魔人であるフォルテを向こうに回して、カレー10杯を難なく平らげての圧勝。それでもまだ、ちとせは腹八分目といったところだったという。
「せっかく作ったんだから、美味しく食べてもらったほうが嬉しいですし。ぜーんぶ、食べちゃってくださいね」
「本当ですかっ!? じゃあ……ありがたくいただきま〜す!!」
そう言って、ちとせはすさまじい量のケーキの山をあっという間に――とても美味しそうに――胃袋に収めてしまった。
「ごちそうさまでした……」
「うわー、本当に全部食べちゃった……すごいです〜」
そう言うミルフィーユの言葉に、皮肉の色はかけらもない。純粋なる賞賛の一言であった。
「さすがに、これだけいただくとおなかが一杯で……しばらくは動けませんね……」
おなかをさすりながらつぶやくちとせ。その腹部は、ゆったりした服の上からもわかるほどに、ぱんぱんに膨れていた。
――質量保存の法則。
質量は何もないところから生じたり、エネルギーなどの相当物を残さずに消滅したりはしない、という物理学の基礎法則である。
あれだけ大量にあったケーキは、消滅してなくなってしまったわけではない。飲み込まれた先の胃腸で消化されるのを待っている状態である。
が。
人間の消化器官の処理能力には明らかに限界がある。その限界を越えた量の食物が摂取された時、その身体は当然ともいえる防御反応をとる。
……過剰に摂取した食物を体外に排出するという反応を。
グギュルルルルルゴロロロロロロロッ!!
「ひあっ!?」
気持ちよさげに椅子の背もたれに身体を預けていたちとせが、突然跳ね起きる。
ギュルギュルギュルグルルルルルルルッ!! グギュルッ!!
「あ…………あぁ…………」
上体を大きく前に倒し、異音の発生源であるおなかを抱え込む。そうしなければ意識が保てないほど、急激で強烈な腹痛が彼女を襲っていた。
(おなかが痛い……こ、これは……)
意識を引き裂きそうな腹痛が、ただの腹痛でないことはちとせにはわかっていた。入隊前は「病気の達人」としてあらゆる病気と体調不良を経験してきている。その経験から照らし合わせれば、今彼女が陥っている体調不良は……。
(げ……下痢…………!?)
胃腸が正常な消化機能を発揮せず、特に大腸での水分吸収が不十分なまま、食物の残りカスを液状のまま排泄してしまう状態。
……などと、落ち着いて考えている余裕は彼女にはない。
ギュルグリュルルルルッ!! グルゴロゴロゴロッ!!
グキュルーーーーーッ!! グルルルルルルルルルッ!!
「い、いや…………」
便意。
消化吸収もそこそこに小腸大腸を駆け抜けてきた液状物が、直腸と肛門を圧迫して起こる排泄欲求。
それも並大抵の強さではなかった。一生懸命に括約筋を締め上げてかろうじて閉じきっているおしりの穴を押し広げるどころか、引き裂き、焼き切り、溶かし尽くすような強烈な圧力と灼熱感。
美味しい後味にひたっていた数秒前の至福の時間から、腹痛と便意に苦しむ我慢の時間へと、ちとせの体調は断崖絶壁から落ちるかのように急転したのである。
「どうしたんですかちとせさん? 顔色悪いですよ?」
「い、いいいえなんでも……なんでもありませんわ……」
蒼白な顔、震える唇からなんとか言葉を紡ぎ出す。
(は、早くお手洗いにーっ…………!!)
彼女の頭の中にあるのはただそれだけだった。
しかし、一つ重大な問題があった。
用を足す……いや、そんな生ぬるい表現ではない。下痢便を吐き出してこの苦しみから解放されるためには、ちとせは自分の部屋のトイレまで戻らなければいけないのだった。
この基地内において、トイレの設備はすべて洋式である。生まれてからずっと母星の和風文化の中で育っていたちとせは、和式以外のトイレをこの年齢になるまで知らなかった。洋式を使ってはみたものの上手く息むことができず、排便に支障をきたして重度の便秘に陥り、下剤と浣腸の併用という荒業をもってやっと排便に成功した、という過去がある。なおその際も洋式本来の使い方ではなく、O型の便座の上に両足を乗せて和式のようにしゃがみ込んだ体勢をとっての排泄であった。ほとばしる便液が便座や床を救いようのないほどに汚したのは言うまでもない。
もっとも、今感じている便意は、自然に起こった下痢とはいえそのときをも上回る強烈さであるから、洋式に腰掛けても勝手におしりの穴は開いてしまうと思われるが、それならそれで他人の部屋のトイレで壮絶な排泄をするという最大限の恥辱を味わうことになり、そんなことは決して甘受できないという乙女としての意地もあった。
「す、すみませんが、今日はこれで失礼しますっ!!」
「あっ、ちとせさん待って!!」
手を伸ばすミルフィーユの引きとめもむなしく、ちとせは一目散に部屋を飛び出してしまった。
「…………はぁっ……はぁっ…………あぁぁぁぁっ!!」
全力疾走を続けていた脚が止まる。
ギュルゴログギュルルゴロロロロッ!!
ゴロゴロゴロゴログルギュルグキュルルルルルーーーーーッ!!
「だめっ……でちゃうっ…………」
荒れ狂う便意を必死に押さえる。
もはやおしりの穴の力だけでは足りず、両手まで使っての総動員体制である。
ゆったりと下半身を覆うマントのような軍服、その上からおしりの穴を全力で押さえつける。
両手の補助を失って荒れ狂うがままのおなかの痛みに耐えながら、絶え間なく襲い来る便意の波を文字通り水際で押し返す。脚は力なく震え、指先は力の入れすぎで震えている。頬に浮かんだ朱の色は、腹痛の苦しみと、便意に耐える必死さと、廊下でこのような格好の我慢を続けている恥ずかしさとの混合色。
必死に下痢の苦しみと戦う彼女の姿は、確かにみじめではあるが……それ以上に美しかった。
グキュ…………ッ…………。
「…………くっ……はぁ、は、はぁぁぁっ………」
便意の波がかすかに引いていく。便意には押したり引いたりの波があるということを、少なからぬ下痢の経験からちとせは熟知していた。この隙にまた全力で部屋へ――。
「おや、ちとせじゃないか。何やってんだこんなところで?」
「……っ!?」
突然声をかけられたちとせ。横を向くと、フォルテ、蘭花、ミント、ヴァニラというエンジェル隊の面々。
(い、今はお話なんかしてる場合じゃないんですーーーっ!!)
キュルッ……
猛烈な便意の残響がおなかを鳴らす。彼女には文字通り一刻の猶予もなかった。
「あ、あの、私急いでいますので、失礼しま……」
グルルルルルルルッ!!
「!!」
ちとせの言葉は、彼女自身のおなかから発せられた音によって遮られた。
(き、気付かれた……!?)
便意を我慢していることに気付かれたら、未来永劫嘲笑の的にされる……。ちとせの脳裏に、そんな被害妄想が浮かんだ。
「もーフォルテさん、食べたばかりなのにまたおなかへったんですか?」
「あたしじゃないって! ……しかし、食べたりないのはホントだねぇ。そだ、ちとせ、今度はあんみつの大食いで勝負しないかい?」
「あ、アタシもさんせー! ……ふっふっふ……覚悟しなさいちとせ。カレーでは不覚をとったけど、甘いものは別腹! アタシの四次元胃袋にかかればあんみつの10杯や20杯ぺロリよぺロリ!」
「蘭花さん、四次元胃袋などと……乙女の使う言葉とは思えませんわ……」
「食べ物への冒涜…………きっと、天罰が下ります…………」
赤面急迫となるちとせをよそに、エンジェル隊の4人は雑談に興じている。
……いや、ヴァニラの言葉だけは紛れもない真実だった。美味しくいただいたとはいえ、本来一度に食べるべき量をはるかに越えてケーキを食べつづけたちとせに、下痢という天罰が与えられたのだった。
……もっとも、本人はその言葉の意味を噛み締める余裕などない。
(あ、だめ…………だめっ、でちゃうっ!!)
プジュ…………。
かすかな音。
今までおなかの中で鳴り響いていた音とは違う、外気との接触音。
出てしまったのは気体か、液体か…………。
「……やだフォルテさん、すかすならあっちでやってくださいよ」
「ちょっと何言ってんだい、あたしじゃないって言ってんだろ!」
「ですから蘭花さん、そのような下品な言葉遣いは……」
「…………天罰……天罰……」
(や、やだ……においが……)
ちとせの鼻にももちろん伝わっている、強烈なにおい。その悪臭を、他の4人にもしっかりと嗅がれていた。
ちとせの顔の赤色が羞恥の要素に満たされる。
(ど、どうしよう、早く離れないと……)
そう思って一歩後ずさったその瞬間。
かすかな放出で不安定になっていたおしりの力の均衡が、はっきりと乱れた。
ブボブブブブブジュッ!!
「……!!」
ちとせの悲鳴は声にならなかった。
今度は疑いようもない。わずかな固体を含んだ液状のものが、彼女の服の下、下着の中へと吐き出されたのである。
「ちょっとフォルテさん……」
「もう……嫌ですわフォルテさん……せめてその……ねぇ?」
「だーかーらっ!! あたしじゃないって何度言ったら!!」
「……あなたに……審判……」
「ヴァニラまで言うか!!」
(そっか……私……みそっかすなんだ…………)
朦朧とした意識の中でちとせは考える。
自分を置きざりにして騒ぐ他のメンバー。本当の友達がほしくてエンジェル隊とお近づきになったはずなのに、結局はその壁を崩せないまま……。
(でも……今は無視された方がいい……)
何しろ下痢おもらしの真っ最中なのである。関心が自分に払われていない今しか、逃げ出すチャンスはない。
「……っ!!」
ちとせはくるりと振り向くと、自分の部屋へ向かって走り出した。
……液状便がもれ続けるおしりの穴を、両手で服の上から押さえながら。
「…………さて、もういいかね」
「……ちとせ、大丈夫かな…………」
「身体の方はじきに治ると思いますけれど……やっぱり、気にはなさるでしょうね」
「まずいときに居合わせちまったねぇ……気付いてないフリが通じてればいいけど」
「……なんとか、なる……」
「そうだといいけどねぇ……」
「はぁ、はぁ………あぁぁぁっ!!」
ウィィィィィ……
ブビビビビビッ!!
部屋のドアが開くわずかな間にも、おしりの穴からは強烈なにおいを放つ汚物があふれ出る。
すでに下着はたっぷりの下痢便で満たされ、その淵からはみ出した汚液を、上から押し付ける上着のマントが吸い込んでいた。もともと真っ白だった上着には、おしりの部分だけ円形の茶色い染みがくっきりと浮かんでいる。
「うぅっ…………」
ブビブビブビビジュブボボボボッ!!
一歩歩くごとに溢れ出す下痢便。
「ぐ…んっ…………」
ビチビチブリブブブブブッ!!
すでに下痢便の水分をいっぱいに吸い込んだマントの茶色の円から、吸収し切れなかった滴が垂れる。マントの裾へ向かって茶色の尾を引き、また途中で地面に落ちて水滴を作った。
「はぁ…………あぁっ……」
プシュッ……
トイレのドアが開く。
目の前には、夢にまで見た真っ白い和式の便器。
(やっと……やっと…………)
長い道のりを越えてたどり着いた、我慢の旅の終着点。
ギュルルルルルグギュルゴロロロロロッ!!
「うぅっ!!」
ガサガサッ!!
ベチャ……ズズッ!!
下着を汚し尽くしてもかけらも弱まらない便意に突き動かされ、ちとせは茶色く染まった上着の裾をたくし上げ、もはや汚物貯蔵庫と化した下着を、真っ白な脚が汚れるのもかまわず膝下まで一気にずり下ろした。
便器に、しゃがむ…………
「んーーー……っ!!」
ビチビチビチビチビチビチビシャァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!!
まだ腰が落ちきらないうちから、おしりの穴が開き始めてしまう。
何度かの空気混じりの噴出の後、全開になった穴から液状便がものすごい勢いで吐き出された。
「あ……あぁっ…………」
ブチュブチュブチュブチュッ! ジュルブビリュッ!!
ブビビチビチッ!! ビジュブリュブパブビビビビビッ!!
滴り落ちるほど大量の下痢便に塗り尽くされた股間から、同じ色の汚物がさらに大量に生み出される。あっという間に便器がその色に染め上げられ、同じ強烈なにおいの発生源となる。
「んんっ…………んぅっ…………!!」
ブビリュビシャブビッ!! ブピピピピピピピッ!!
ブリブチャジュバビチッ!! ビビビブリュリュリュリュッ!!
ブチャビジュブリュリュッ!! ビチィィィィィィィィィィィィッ!!
止まらない。
便器の中を埋め尽くした下痢便の上に、さらに下痢便の激流が炸裂する。飛び散る先は便器の中、側面、そして外側。スリッパに履き替える余裕もなかったちとせの真っ白な靴下に、容赦なく茶色の飛沫が染みを作っていく。
「うぅっ……くぅぅぅっ…………」
ブビビビブリッ!! ビチビチビチビチッ!!
ブジュルルルルルルルッ!! ブシャーーーーーッ!!
ビチッ! ブリブリブリッ!! ビジャブジュビビビビビッ!!
ブリュビチビチビチッ!! ブビュルルルルルルッ!! ビチャビチャビチャッ!!
おしりの穴が壊れてしまったかのような、勢いを押さえることすらできない強烈な便意。ちとせはわずかな抵抗すらできないまま、腸内の奔流をひたすらに垂れ流しつづけていた。
ねじ切られるようなおなかの痛み、焼けつくような肛門の痛み、そしてトイレの中を満たしてなお濃縮されつつある下痢便の刺激臭。
おしりの肌をおもらしの痕跡で、両足の靴下を下痢便の跳ね上がりで汚しながら、なおも狂ったように排泄を続ける少女の姿がそこにあった。
「……はぁっ……はぁっ…………ふ……はぁぁぁっ………」
肛門からの噴出が途切れる。
わずかに痛みが引き、かろうじて目を開けることができるようになった。
「え…………きゃぁぁーーっ!?」
目を開けてすぐに飛び込んできたのは、便器に並々と溜まった大量の下痢便。自分が排泄したことを信じられなくなるような大量の汚物の海に、ちとせは危うく失神しそうになった。
なにせその量が尋常ではない。
和式便器の例に漏れず、金隠しの下にはくぼんだ部分があるのだが、その部分はたっぷりと注ぎ込まれた下痢便により、他の部分……おしりの真下と同じ水面になっていた。その水面の高さも、便器の深さの半分を上回ってしまっている。
ギュルギュルギュルゴロロロロロロロッ!!
「うっ…………!!」
(ま……まだ止まらない……!!)
新たに便意が駆け下ってくる。その激しさたるや、あの地獄のような我慢の最中にも匹敵するほどだった。あとどれだけの量がおなかの中に溜まって排泄の時を待っているのか、ちとせ本人にもわからなかった。
(と、とにかく流さないと…………)
このままのペースで出し続けては、便器からあふれてしまう可能性すらある。にわかには信じられないことだが、さっき食べきってしまったケーキの量、さらに今感じているおなかの苦しみから考えても、その非現実が現実と化すのは時間の問題としか思えなかった。
カコン。
………………。
「え、ええっ!?」
流れない。
水が流れなかった。タンクについた水洗レバーを一番奥まで倒しても、水滴の音一つすら聞こえない。裏返った悲鳴が、悪臭充満するトイレにむなしくこだました。
カコ、カコッ……。
「………………うぅっ…………うそっ…………」
目の前の現実を否定しようとするかのように、ちとせは何度もレバーを動かす。しかし結果は同じだった。
グギュルルルルルルルッ!!
「い、いやっ…………!!」
やがてしびれを切らしたかのように、鈍痛を繰り返していたおなかが激しい痛みを生み出し始める。おもらしと大量排泄に汚れた肛門はもう、間髪いれずこみ上げてきた便意に抗う力を持っていなかった。
「あぁ…………あぁぁぁっ!!」
ビチャビチャビチャビビイィッ!! ブリビチビチビチッ!!
ブバビチャーーーーーッ!! ドボドボドボドボッ!!
ブジュブジュブジュビシャーーーーーッ!! ブリリリリリリリリッ!!
下痢便排泄の再開。……そして、今度はもう止まらなかった。胃腸から送り込まれてくる未消化物が、ノンストップで便器に叩きつけられる。すでに下痢便の大洪水となっている便器の水面は、ものすごい勢いで上昇していった。
「いや…………だめっ…………」
ブジュブジュブジュビビビビビッ!! ビィッ!!
ブリブビチャビリュブリュリュリュッ!! ジュパブリュッ!!
ビジュブリビチビチビチビチビチッ!! ビシャブリュリュリューーーッ!!
あっという間に下痢便が増水し、便器の縁の高さにまで達してしまった。わずかにその側面より高くなっているのは、わずかな表面張力によるもの。あと一滴でも下痢便のしずくが垂れれば、その堤防は難なく決壊するだろう。
「う…………うぅっ…………」
この便器の中にはもうわずかでも排泄してはならない。便器をあふれさせてしまうその排泄は、おもらしに等しい禁忌なのであった。
すでにおもらしによって消えないひびの入ったちとせの心。この上便器をあふれさせてしまったら、その傷ついた心は粉々に打ち砕かれてしまう。
それはちとせには十分わかっていた。
それでも…………あふれだす下痢便の勢いは止められなかった。
「――っ!!」
ブビビビビビビビッ!!
ビチビチビチビチビジャーーーーーッ!!
ジュブビビビビビビッ!! ブリブビビビビビッ!!
バシャビシャブシャビチャァァァァァーーーーーーーッ!!
最後の一線はあえなく崩壊した。
便器の縁を越えて、下痢便がタイルの上にあふれ出る。踏ん張っている足にもその被害は及び、靴下をかかとから茶色に染め上げていく。
ジャバババババッ!! ビシャビシャビシャッ!!
ブリブビュビチビチビチビチッ!! ビビビビビビブリュッ!!
ブブブブブブブビッ!! ビチビチドボドボドボドボッ!!
ブリュブリュブジュブジュビビビビッ!! ビチャブジャーーーーッ!!
あふれ出す汚水が床を汚し、跳ね返る水滴がおしりをさらに汚す。そしてその汚らしさの極みの中で、ちとせはまだ、腸内に残された下痢便を吐き出しつづける……。
「あぁ……………あぁぁぁ…………」
ブジュブジュブジュビッ!! ビチビチビッ!!
ブジュビチビチビチビチビチビチビチッ!!
ビシャッ!! ベチャベチャッ!! ブピピピピピピピッ!!
ブビビビビビビビブリィィィィィィッ!!
ビジャブリュブジュルルルルルルルルルッ!! ビチビチビチッ!!
ビチャビチャブジュブジュブビビビビビブリィィィィィィィーーーーーーッ!!
「…………ひくっ…………うぅっ…………すっ……」
固く閉じた目じりから涙がこぼれる。
その涙が落ちる先は…………一面の茶色。
病室と自分の部屋しか知らないような深窓のお嬢様で、他人の前ではお手洗いと口にすることすらはばかる少女。
その少女の身体の中から吐き出された結果が、この汚物の海だった。
「うぅっ…………」
ありったけの紙を使って、便器の外に溢れ出した下痢便を吸い取る。
……予備のペーパー1巻きを使い切ってもなお、便器の外の汚れは拭き取れなかった。ただ、とりあえずドアを開けても溢れ出さない程度には、その汚れを吸収することに成功した。……トイレの隅に山と積まれた、元の白色を一点たりとも残さない紙くずの山と引き換えに。
それから、トイレを出て汚れきった服を脱ぐ。ショーツは後始末の前に脱ぎ去り、下痢便を吸った紙くずといっしょに打ち捨ててある。下着姿になり、上着にまで染み込んだおもらしの痕跡を目にして、あらためて自分のやってしまったことを思い知った。
ちとせの故郷に伝わることわざがある。
覆水盆に帰らず。
その言葉を思い出さずにはいられなかった。
目の前に広がった、自らが撒き散らしてしまった汚い「水」。
時間よ戻れ、とは言わない。せめて目の前に残留する汚物だけでも、消えてなくなってほしかった。
だが、そんな願いが叶うはずはない。
覆水は盆に帰らぬのみならず、拭き取る責任も自らにある――。
そんな悲しい定めを思いながら、ちとせは長い長い後始末を始めることになった。
彼女が傷心のままベッドに倒れこむことができたのは、これから数十分の後。
断水が回復して綺麗になった便器の中に、再びもよおしてしまった便意を吐き出した後のことである……。
あとがき
ギャラクシーエンジェル第4期第2話でちとせがケーキの食べすぎでおなかをこわす描写がありました。おいしそうに食べていた段階でもしやと思ってはいましたが、その後水洗の音が響くトイレから青ざめた顔で出てくるシーン。もうこれだけで興奮の極地に追いやられてしまいました。
烏丸ちとせはギャラクシーエンジェルの新キャラとしてゲーム版から登場したキャラで、まじめで謙虚な黒髪大和撫子ということで、自分にとって理想的ともいえるキャラクターです。
本来一定以上に好きな女の子にはこういった想像を抱かないようにと自戒していたのですが、向こうからこういう場面を提示されては黙ってはいられない、ということで筆の赴くままに書き進めてしまいました。
というわけで完成したのが今回のもので、前回書いた百合のものを越えるほどの大量排泄で、便器があふれるのが最大の見所でしょうか。幸いちとせには実は大食いというゲーム版からの設定がありますので、今回はもともとが何でもありのギャラクシーエンジェルなので、多少の非現実さは許容して問答無用で超大量排泄を描くことにしました。
この分量で完成に3日かかってしまうのは少し腕がなまっているかな、という思いもありますので、何とか時間を見つけてつぼみシリーズのペースも上げていきたいと思います。