下痢っ子悠里ちゃん4
「大嫌いなお兄さん」

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秋元 悠里(あきもと ゆうり)

 10歳 教育大付属小学校4年
 身長:130cm 体重:25kg

比較的おとなしめな少女。
小学1年生の時から胃腸が弱くなり、頻繁にお腹を下すようになる。
その体質から劣等感を感じて心を開ける友人がなかなかいない。
勉強は結構できる方で、エリート小学校の中でも中の上クラスの成績。
…しかし、長いテスト時間となると下痢で集中できない事も多く、成績にばらつきがある。


矢戸 武志(やど たけし)

 18歳 浪人
 身長:170cm 体重:80kg

悠里の母の友人の息子。
受験に失敗してしまった浪人。
少しロリコンの気があり、怪しい行動が目立つ。
悠里に嫌われている。

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「はぅぅ…」

ビビビチィィ・・・
ブリブリブリィィィ

金曜の夜。
秋元家に響き渡る、悲しい少女の排泄音。

ビチッ・・・
ブリブリビチビチィ

便器にたたきつけられる軟便。
跳ね返ったものが、点々とお尻を茶色に汚す。

悠里はトイレにいた。
その風景は、いつもと変わらない。

…しかし、悠里の顔には多少の微笑みが見える。

この小学1年の頃から変になってしまった体質により、悠里は精神的にネガティブになってしまい、いつも困った表情ばかり浮かべるのが常となっていた。

悠里は小学1年生の頃から胃腸の調子が悪く、しょっちゅうお腹を下す体質になっていた。

原因はよくわからない。
幼稚園の時はなんともなかったのに、小学校に入学して給食になったからであろうか。
たびたびトイレに駆け込むようになった。
食べるものもアイスクリームや牛乳など、お腹に刺激を及ぼすものを食べてしまうと確実に下す。
悠里自身、アイス・牛乳が大好きなだけに、とても辛い状況だと言える。

好きなのに食べることができない…。

悠里は食べたい欲求を封じ込めるしかないのである。
…けど、まだ我慢できない小学生な年頃。その葛藤に負けて食べてしまう時もある。
その時は、確実に下痢となって自分に跳ね返ってきてしまう。

そんな辛く苦しい体質を抱えた悠里が浮かべた微笑。
悠里は少し微笑んで安堵のため息を漏らす。

「…やった、ちょっとゆるいけど、形になってる」

いつも液状に近い軟便ばかり排泄していた悠里は、この日、いつもよりも形になって出てきた排泄物を見て、喜んでいたのである。
ひょっとしたら、この忌々しい体質が、良い方向に変わりつつあるのかもしれない。
辛く苦しかった日々を思い浮かべると、涙が出そうなくらい感極まって、胸が熱くなる。

「早くトイレから出て、お母さんにこのことを伝えよう」

がんばってできた逆上がりを報告する嬉しさに似たものが胸を躍らせる。
いつも心配してくれてるお母さんはどんな顔をして喜んでくれるのだろうかと想像すると、さらに胸が高まる。

そしていつもより形になった便を拭き取ると、悠里はそのぬちゃっとした感触に喜びを覚えた。

慌ててパジャマを着て、トイレを駆け出す。

バタン!ドタドタ!!

「お母さーん!」

その後、秋元家を暖かい歓喜の光が包み込む。
これまでに何度かあった喜びの報告の一つとして、今夜、それは秋元家の一つの大きなイベントとなった。

悠里の体質が、良い方向に変化している!


<2>
…次の日。
土曜日で学校は休み。
日が昇って間もない朝。
母は悠里をリビングに呼んだ。

「悠ちゃん!ちょっと来て!」

呼ばれた悠里はパジャマのまま、リビングへと駆けつけた。

「どうしたの!?お母さん!」
「あのね悠ちゃん…じゃーん!!」

母は満面の笑みで紙袋から悠里に突然プレゼントする。
それは洋服だった。
大人しい悠里を引き立たせるような、落ち着いた感じのリボン付きブラウスとスカート。
靴まである。

「お母さん!これってどこから??」

突然のプレゼントに、困惑する悠里。
訳がわからないといった感じで、声も半分引きつっている。

「悠ちゃんのお腹が良くなったご褒美!」

母は笑顔のままで、プレゼントを悠里に渡す。

「ええっ!?」

いきなりのことで悠里にはさっぱり訳がわからなかった。
昨日の今日で、こんなプレゼントを準備できるはずがない。
あまりブランド洋服などには興味の無い小学生、悠里にでも、その洋服は結構高そうなデザイン・生地だとわかる。

実は母、とある友人に高級ブランドのアウトレットを紹介され、そこで購入したのだった。
それがたまたま昨日の晩に、悠里の体調が良好になったという事実が重なり、「ついで」にご褒美として準備できたのだ。
その時には、お金の持ち合わせがあまり無かったため、自分の欲しいものよりやや安価な悠里のものを選んで帰ってきたのである。

「なかなかいいでしょう!悠ちゃん!」
「あ、え、うんっ…。えーっと…」

突然のプレゼントに、喜びの表情がうまく作れない悠里。
表情を作るのに混乱している悠里に、母は言う。

「それでね…今日なんだけど」
「え?なーに??」
「この悠ちゃんの服を買ったところに、もう一回買い物に行こうと思ってるの」
「え!?わ、私はこんな良い服買ってもらったから、もういいよ」

悠里は思わず遠慮する。

「あはは、ありがと。けど、今日はお母さんのを買うの」

家計を気遣う(?)娘に感謝の意を示した後、母はさらに続ける。

「お母さんの友達の武志君のお母さんと一緒に行くのよ」
「…!」

いきなり悠里の表情に小さな陰りが見えた。
浮かれている母は、そんな娘の表情の変化に気づくことは無かった。
それもそのはず、悠里は楽しそうな母を気遣って、なるべく気付かれないように精一杯だったのだから。

武志…。
その名前を口にされると、悠里の胸は不快感でいっぱいになる。

「武志君の母親」と母は、歳こそ離れているが、かなり仲が良くお稽古などで交流が深い。
街への買い物にも、よく行ったりする。
生活の悩みなどの相談もよくしているらしい。

問題は、その息子である武志。

過保護で育てられたどうしようもない息子で、陰険。
勉強は特にできないが、とりあえず大学に行こうと受験する。
当然ながら、どこの大学にも受かることが無く、今年の初めに浪人となった。

母同士の交流から、悠里は時々武志と遊ばされたことがある。
少し変わった趣向の持ち主で、何を考えているのかわからない。
意地も悪くて、母親の見えないところで意地悪を受けたことがある。
そしてやたらと近寄ってきてベタベタ触ってくるので、気持ち悪くてしょうがなかった。

母親の見えるところでは異常なまでに好青年を気取るため、悠里の母親にも評判がいい。
ゆえに悠里と武志は仲の良い兄妹のようだと認識して、安心して悠里を武志に任せてしまう。

勘違いされる悠里はたまらない。
気の弱い悠里は、武志のそんな裏の顔を知りながらも、母親同士の仲を濁したくないために気遣っていた。
武志は…悠里を弄べる喜びから、この好都合な立場を心から感謝している。

その不愉快な単語「武志」を聞いて、不安で表情を曇らせる悠里に、母はさらなる追い討ちをかける。

「お母さんたち、中央駅まで買い物に行って来るから…」

悠里はその先続くであろう言葉…聞きたくない言葉が発せられる直前

(わ、私も!私もお母さんたちの買い物に連れてって!!)

と喉まで出かけたが「母親同士の、大人のショッピング」を匂わせているところから、邪魔してはいけないとの気遣いが先行し、言えなかった。

「…その間、武志君の家でしばらく待っててね」

無情にも、母は悠里が一番聞きたくなかった事実を告げる。

(い…家にいていい!?)

悠里は必死に言葉にしようとするが、声にならない。
それどころか、追い討ちのさらに畳み掛けるが如く、

「ちょっとおうちを留守にするから、バルサン焚いて行こうね」

…悠里の逃げ道は完全に無くなってしまった。

<3>
気が進まない悠里に、腹痛の波が押し寄せる。

グルルルゥゥゥ…

「あ…あふぅ」

新しい洋服に着替え終わった直後の悲劇。
ただ、いつもの下痢のサイクルから、若干少なめだと感じた悠里は、余裕の足取りでトイレに入る。
そして皺一つ無い、新しい肌触りのスカートを慎重にまくり上げ、便座に座る。

ブスッブブブッ!!

おならが出る。
悠里は少し嬉しかった。
いつもなら、液状の便がいきなりブシャーっと流れ出るため、おならが出る事は少ない。
それが今回、勢い良く出たおならから、恥ずかしさよりも嬉しさがこぼれる。

ビビビ…ブリブリブリ…!!
ブスッ…ブボッ…!

悠里は新しいスカートを汚さないようにぴらりと上げて、跳ね返る軟便から守った。
さっそくお気に入りになった洋服と、少し形になりかけた軟便は、悠里の表情を和やかにする。
…ただ、「武志」の家に行く事実だけが、どうしても胸の内側に引っかかり、悠里は表情を完全に「晴れ」にはできなかった。




挿絵:なるび様より寄贈


トイレから出た悠里は、念のため「正露丸」を飲み、準備する。
少しでもあちらの家で用を足さないように、備える。

母はバルサンを炊き、外出を促す。

悠里は新しく買ってもらった、白い革靴に足を入れた。
まだ履き慣れない、くるぶしが擦れる感じが初々しい。
行く先が嫌な場所だとはいえ、新しい洋服に包まれて触れる外の空気は、また格別であった。

…いつもの装備は忘れない。


<4>
「武志の家」に到着。

「あらー!いらっしゃーい!!」

甲高いおばさんの声が響き渡った。
悠里親子は門を抜け、その声の主の前に立つ。

「悠里ちゃんも大きくなって!ちょっと見なかっただけなのにね!!」
「悠里ったらもう小学4年生なのよ。あっと言う間よ」

ごちゃごちゃと世間話が始まる。
さすがに悠里も「なんで中に入ってしゃべらないの?」という疑問を抱く。
…おばさん同士の会話なんて、こんなものだ。
話さえできればどんな場所でもいいのだ。
そしてそんな悠里の疑問に気付かされたかのように

「さあ、とりあえずあがってよ」

…と中に招き入れられる。
(なんで最初から中に招き入れないのかなぁ…)
小学4年生の少女が抱いた、非常に難しい疑問をよそに、母親と共に家へと招きいれられる。

最初、リビングに通され、早速母親同士の会話がはずみだした。
早速悠里はこの家のトイレを探す。
まだ着実な便意はないのだが、万が一、大便をしなければならなくなった時のため、下調べしておく必要があったのだ。
武志の母親に位置を聞き、トイレへと向かう。

扉を開けると「和式」だった。

一段高くなった部分に便器がある、一昔前のデザイン。
紙もきちんと備え付けてあり、特に問題はなさそうに見えた。
悠里はついでに用を足そうと思い、一段高くなったその部分に登った。
そしてスカートを上げてパンツを下ろしてしゃがみこむ。

「んんっ!!」

正露丸が効いているせいか、大便は出ない。
思ってもいなかった好調に、悠里は少し微笑む。
そして

チョロチョロチョロ…
シャーッ!!

息んだ勢いで、おしっこが勢い良く放たれる。
水の溜まった部分まで届く勢いの小便。
あまり水分を摂っていなかったのに、すごい勢いで放たれる小便。

ちょっとだけ、便器からはみ出してしまった。

罪悪感に包まれた悠里は、慌ててティッシュではみ出した小便を拭き取り、後始末をする。
この小便の量は、ここに来るということで緊張していたのだろうか。
とにかく自分の思っている以上に多かった。

後始末を終えた悠里がリビングに戻ると、母親たちに「武志」の部屋へ行くように言われる。
…ついに悠里が描く「牢屋」に入れられる時が来た。

少し前、悠里は一つの物語を読み終わっていた。
それは中世の時代を舞台とした、王子と召使いによる許されない恋話だった。

とある召使いが、仕える王子に恋をした。
その王子も、同じくその召使いに恋する。
両想いとなったが、立場上許されることの無い恋仲。
溺愛された召使いは、王子に贔屓されるが、同僚の召使いから目の仇にされていじめられる。
王子は婚約者である姫との結婚を拒み、何とかその召使いを求める。

思い通りに行かずに怒った王は、その召使いを牢屋に閉じ込め幽閉してしまった。

会うことができなくなった王子は、悲しみに暮れた。
それでも時々牢屋に忍び込み、召使いと面会していた。
そんな諦めきれない王子の様を見た姫と王は最終手段として、その召使いの食事に毒を混ぜる。

知らずに牢屋の中で食べた召使いは、毒を盛られ死んでしまう。

感受性の高い悠里にとって、今の自分は「牢屋」に入れられようとしている召使いそのものだった。
なぜ、こんな悲劇の作品を読んだのかよくわからないが、元々読書が好きな悠里は、作品をあまり選ばずに読破するクセがあったりする。
…たまたま、自分の読んだ本と自分の状況がシンクロしてしまって、悲しみが倍に膨れ上がった。

ドクンッ

「牢屋」の前に立つ悠里。
廊下の板の冷たさに、白いソックスがそわそわと動く。
このまま立っていると、お腹を冷やしかねないので、とにかく「牢屋」の扉をノックする。

「どうぞ」

無愛想な男の声がした。
悠里は扉を開けて、そろりと中に入った。

「いっらっしゃい。悠里ちゃん」

部屋に入るなり、脂ぎった顔がニタァと笑う。
これが「武志」。悠里が嫌う男。
悠里は気持ち悪くなり目も合わせなかった。
そのまま硬直していると、武志は立ち上がり扉を閉めようと近寄ってきた。
近づかれたくないので、悠里は慌てて扉を閉める。

…ついに悠里は「牢屋」に閉じ込められてしまった。

ササッと距離を保ち、悠里は部屋の隅にちょこんと座り込んだ。
そんな悠里を恥ずかしがっているのかと思い、武志は元いた場所に戻って椅子に座る。
悠里は嫌いな武志をなるべく視界に入れないように黙々と持ってきた本を熟読する。

しばらくの沈黙が二人を包む。

すると、母たちに動きが見られた。
コンコン
武志の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
ドアの近くにいた悠里が素早く開ける。
扉を開けるために武志が近寄ってくるのが嫌だったからである。

「武志ちゃん。私たち今から昼くらいまで中央駅まで買い物に行ってくるからね。留守番よろしく」
「悠ちゃん、いい子にしてるのよ」

お互いの母は、それぞれの子供にメッセージを残し、楽しいショッピングへと出かけた。
そして玄関の扉が閉まる音を確認し、武志の顔がニンマリといやらしい顔つきになったかに思えた。
悠里は必死に武志の存在を頭から消そうと、本を必死に読み続ける。
そんな悠里をよそに、武志はごそごそと何やら準備をしていた。
武志の行動なんて、姿すら見たくないので、全く興味が無い振りをして本を読み続ける。
そしてふと、部屋にかかっている時計を見た。

(昼まで…2時間と少し我慢すれば…おなかの調子もいいみたいだし、大丈夫だよ…)

この2時間が、2時間という時間がこれほど重く感じたことは無い。
とにかく必死に本を読み続ける。
武志を意識しないことに集中してしまっているため、読んでいる本の内容なんて頭に入らない。
とにかく今は、昼までこの「地獄の牢獄」に幽閉されている時間を我慢すればいい。

そんな悠里のそばに、さっきまでごそごそしていた武志が、オレンジジュースを置いてくれた。
近づかれていたことに気づかなかった悠里は、少しびっくりして武志を見た。

「オレンジジュース、飲みなよ」
「・・・・」
「のど、渇いただろ?」
「・・・・」
「おいしいよ」
「・・・・」

どんなに勧められても無言を突き通す悠里。
実はこのオレンジジュース。
悠里が無視している間、武志がこっそりと強力な下剤を混入したものである。
武志が必死に勧める様は、誰が見ても異常だとわかる。
幸か不幸か、前に読んだ王子と召使いの話から、悠里は他人が出した飲食物に手を出さなくなっていた。
ましてや、一番嫌いな人間が出したものなど、飲めるはずがない。
どんな毒が入っているのやら…と多少オーバーな思い込みをしていた悠里。

今回は、当たっていた。

一方、うまく下剤を盛ることができなかった武志。
チッと聞こえないような舌打ちと共に、オレンジジュースをその場に置いたまま、元の位置に戻る。
そして

「ねえ、悠里ちゃん。それ、何読んでるの?」
「・・・冒険物」
「楽しい?」
「・・・・」
「今何年生だったっけ?」
「4年生」
「今、学校でどんな遊びをしてるの?」
「教室であやとり・・・」

武志がマシンガンのように質問するも、悠里はスパッと会話をとぎらせる応対で会話を終了させる。
煙たがっている悠里の顔色などお構いなしに、武志はどんどんつまらない質問をして、悠里に答えさせた。
悠里としては、とりあえず何事も無くこの時間をすごすことに集中。多少の質問攻めを我慢する。

…だが、この武志の質問の目的は、悠里にしゃべらせることで、のどを渇かせることであった。
会話の内容なんてどうでもよかったのである。

休み無い質問攻めに、武志ものどが渇く。

(そろそろか・・・)

武志は息をのみ、悠里を見守る。
すると悠里は自分が持ってきた小さな水筒を空け、水分を補給する。
武志の出したオレンジジュースには手を付けなかった。

(・・・残念)

武志は悔しがる。
悠里は水筒を置いて「ぷはぁ」と可愛らしい息を吐く。
そして再び本に目を落とした。

(あーあ。息苦しいな…早くお母さんたち帰ってこないかなぁ)

重苦しい空気の中、悠里は少し呆れ返るような仕草で天井を見た時、
ブルブル…

(あ、またおしっこしたくなっちゃった…)

悠里は何も言わずに立ち上がり、武志の部屋を出てトイレを目指す。
武志の家のトイレは、ちゃんと紙も準備してあり、特に問題も無い。
そして今日の良いと思われる体調…。
すべてが順調だった。
・・・それゆえ、甘く見すぎていた。

悠里は持ってきた替えのパンツや紙が入ったポーチと、さっき少し飲んだポカリスエットの入った水筒を、部屋に置いたまま出てきてしまう。

・・・これが悠里の運命を大きく変えることになった。




挿絵:なるび様より寄贈


悠里は鼻歌交じりでトイレの扉を開け、便器にしゃがみこむ。
そして軽く息むと

チロチロ・・・
プシャァァァ・・・

可愛らしい尿道から、弱弱しくもきれいな糸のような小便が放たれた。
その小便の勢いからか、肛門の力も緩み

プスゥ・・・
ビチッ・・・ベチャッ・・・

小さなドロッした便が便器の中に落ちていった。
いつもの悠里らしくない、形になった便であった。
悠里は少し嬉しかった。

(やった・・・何だかとっても嬉しい・・・)

悠里は幼いながらも、子供でも産んだのかと思うような喜びを感じていた。
それもそのはず、これまでの苦労を考えると、このゲル状ではあれ形を成した大便は、悠里を喜ばせるのに十分すぎた。

カラカラ・・・

用を足し終えた悠里。
ペーパーを使って丁寧に後始末。
まるで別れを惜しむような気分で、コックをひねる。

(またね・・・これからはずっと、いや、どんどん形になったうんちをするんだ・・・)

半ば決意にも似た宣言の後、トイレを後にする。
そして再び武志の待つ「牢屋」へと入っていく悠里。

まさか、自分があの本の「召使い」になってしまうとは、知る由もなかった。

(後編につづく)


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