白い壁
「え…………っ………………………………」
激しい腹痛に耐え、狂おしい便意に耐え、たどり着いた場所。
彼女が求めていたものはあと10歩の距離にあった。
でも、次の一歩を踏み出すことはできなかった。
「どう……して………………?」
白い壁。
本来開け放たれている空間を隔てる、壁があった。
わずかな希望を求めてたどり着いた少女を、無情に突き放す壁があった。
「あ…………っ………………だ……め…………あぁっ!!」
「あっ、また降ってきた! はるちゃん、こんな早くから雪が降るなんて珍しいんだよ」
「えっ…………? そ……そうなんだ…………」
ある月曜日の昼下がり、白く染まった通学路を歩く二人の少女の姿があった。
頭の横から二房に伸ばした髪を揺らしながら元気に話し続けているのは小学校4年生の雨宮千秋。それと対照的に、おかっぱの髪に薄っすらと雪を乗せ、うつむいて口数少なく歩いているのは、千秋と同級生の桜井春希。
春希はもともとおとなしい性格であったが、2学期から転校してきたばかりで親しい友だちが少なく、内気な性格が更に強調されていた。ただ、いま口数が少なくなっている支配的な要因は、彼女の性格ではなかった。
(…………おなか…………痛い………………)
春希は激しい腹痛と便意に苦しんでいた。
彼女の腸は過敏なほどに繊細で、もともとゆるいお腹が些細なきっかけで猛烈に下ってしまう。
転校してきたばかりの頃は新しい友達や環境に馴染めず、毎日激しい腹痛とともに押し寄せる便意をこらえながら過ごしていた。
やっと慣れてきておなかの具合も落ち着いてきたかと思ったが、彼女のおなかは再び下り坂を転がり落ちてしまった。冬の寒さでおなかが容赦なく冷やされているせいだった。液状化した便が彼女の腸を高速で駆け抜け、おしりから繰り返し排泄される。今日も学校で4回トイレに駆け込み、便器の中を水状便で一杯にしてしまった。
下校時にもおなかの中の危うい感覚を覚えてトイレに行こうとした春希だったが、仲の良い千秋に声をかけられそのまま下校することになってしまったのだった。
外気の刺激を受け、不穏な気配が猛烈な腹痛を伴って便意として押し寄せるのに10分もかからなかった。通学路の途中で、春希の我慢はすでに限界に達しようとしていた。
「……あっ、もう着いちゃった。じゃあねはるちゃん、またあした!!」
「あっ…………う、うん…………ま、また明日…………ね…………」
千秋の家の近くでいつものように別れる。千秋の家に寄ってトイレを貸してもらえたらどれほど楽になるだろうか。激しい誘惑を羞恥心が押し留め、春希は足を止めて左手を振った。
右手はお尻の穴を押さえていた。
ライトグレーのパーカーの袖から少しだけ出た指先が、飾り気のない紺色のスカート、ベージュ色のレギンス、無地の白い厚手のショーツの3枚の布地を2mm厚にまで押しつぶして、内側から膨らみ始めている肛門が開かないように必死に抑えていた。
「じゃーねー!」
千秋がよく通る声を響かせながら曲がり角の向こうに姿を消してからも、春希はしばらくそこから動かずにいた。
「…………っぅ……………………ぁっ…………!!」
ゴロギュルルピィーギュルルルルルルルッ!! グルルッ!
ひとときの別れを惜しむ気持ちがないわけではなかったが、彼女の思考回路の99%までは痛みと苦しみに支配されていた。
腸の奥を絞られているような腹痛。意識が飛びそうな痛みをこらえながら、開きそうになる肛門を外から必死に抑える。
(だめ、だめ、がまん…………!!)
ゴロロギュルルルピィーッ!! グギュルーーーーーーッ!!
グピィィゴロゴログウーーーーーーッ! ギュルギュルギュルッ!
おしりの穴はすでに内側から開こうとしている。押さえる手を離したらその瞬間に水状便がパンツの中いっぱいに広がってしまうだろう。
危うい均衡を抱えて耐える小さな体。
「…………ぁ………」
グキュルキュルッ…………ゴボボッ…………キュルルルルッ…………
一歩も動けず震え続けた15秒間が過ぎた後、腸の奥の方が熱くなる嫌な感覚とともに、すっと肛門の圧力が失われた。
肛門でせき止められた液体は外に出ることが叶わず、腸の奥へと押し戻されたのだった。
お腹の痛みはまだ続いているが、歩けなくなるほどの強烈な痛みは便意とともに引き波となり、一時の安息が彼女に訪れた。
(…………………は、早くトイレに行かなきゃ……!!)
春希は気を緩めることなく、一歩を踏み出した。一度便意が治まっても、程なくもっと強烈な波が襲ってくることを、彼女はよく知っている。
自宅へ向かうなら直進すればよいのだが、春希はその方向とも千秋が去っていった方向とも異なる方向へと一歩を踏み出した。
(公園のトイレ…………早く…………!!)
千秋と分かれた交差点から家までは普段の春希の足で5分の距離だった。
まだ雪の上を歩くのに慣れていない彼女は転ばないように慎重に歩かなければならないが、それだけなら大した問題ではない。便意と腹痛が強すぎてまともに歩けないのだ。ひどい腹痛に耐え、強烈な便意を時々立ち止まってこらえながらでは倍以上の時間がかかり、辿り着く前に彼女の精神か肛門が力尽きるだろう。
それよりも、ここから1分ほどの場所に大きめの公園があり、トイレがある。転校してきたばかりの頃は毎日のように激しい下痢に苦しんでおり、痛むお腹を抱えてそのトイレに駆け込んでいたのだった。転校初日に見つけた公園のトイレは彼女にとって救世主だった。
「ふぅ…………んっ………………んぐっ………………」
ギュルルゴロゴロロゴロゴロッ!!
歩き始めて10秒もしないうちに、春希のおなかが大きな音を立てて痛み始める。
一瞬足を止めた彼女だったが、お腹を抱えて苦しげな姿勢になりながらもまた一歩を踏み出した。
(……まだだいじょうぶ…………今のうちに少しでも進まないと…………!!)
幸いにもまだお尻の穴にかかる内圧は上がっていない。だが、腹痛が強くなったということは、まもなく水状便が肛門に向かって押し寄せてくるということである。
お腹の痛みに負けて動けなくなってしまい、そのまま襲ってきた便意に為す術もなく力尽きた経験が彼女の脳裏に去来する。
その辛い記憶を振り切り、春希は視線の先にある公園に向かって歩く。
あと10m歩けば公園の入口、ありがたいことにトイレは入口のすぐ側にある。
一歩、また一歩と歩みを進める。
お腹を抱えてふらつきながら歩く歩幅はいつもより小さいが、それでも30cmから40cmずつは進むことができる。公園の入口まであと25歩。
「はぁ、はぁ…………」
あと20歩。
「う、うぅ………………っ…………」
あと15歩。
「んっ………………」
あと10歩。
「う、あ、あっ………………!!」
あと5歩。
「あっ…………うぅぅ……っくぅ…………………………!!」
ギュルギュルギュルグギュゥゥゥゥゥゥッ!!
ピィーーグギュルルッゴロッグルルルルルルルルギュロロロッ!!
腹痛がさらに強くなり、腸内の圧力が上がったと感じた瞬間、おしりの穴が勝手に開きそうになった。
注意を逸らさずに備えていた春希は、すぐさま括約筋を締めて内圧に耐える。
(だ、だいじょうぶ…………まだ…………がまんできる…………)
彼女は迫りくる腹痛と便意を堪えながら、次の一歩を踏み出した。動けなくなる前にトイレに。ただその一心で、震える脚を白い地面に踏み出した。
あと4歩。
ゴロギュルルルギュルルルルルッ!! ゴログルギュリッ!
あと3歩。
ギュロロッ! ゴロロロギュルーーーーッ! グギュゥゥゥゥゴロロロロロギュルギュルーーーーーーーッ!!
あと2歩。
ゴロロロロロゴロギュロロロロロロロロロロッ!! グギュゥゥギュルグルルッ!!
あと1歩。
グルルルルルルルグギュルルルルルルルルルルッ!! ピィーーグギュルーーッ!
公園の入口――。
「あっっ!!」
ゴロギュルギュルグウーーーーッ!! グギュゥゥゥゥゥゥゴロロロロロロロロロロロログギュルルッ!! グピィィゴロピーギュルーッ!
今までより一層重苦しい音がお腹から響き、凄まじい圧力が肛門に押し寄せてくる。肛門が開く感覚。
(だめっ…………だめ、でちゃだめっ!!)
少しずつ進んでいた歩みを止め、我慢することにすべてのリソースを投入する。
お腹を抱えていた両手をおしりに回し、全力で肛門の穴を押さえつける。
それでも広がろうとする肛門。それを無理やり押さえつけて力を込める二つの指先。
彼女の精神力が、崩れそうな均衡をかろうじて支えていた。
グギュルルルルルルルルゴロロログウーーーーーーッ!!
「ぐ……ぅっ……!!」
強烈な便意の前に意識から追いやられていた腹痛が再び鎌首をもたげ、中枢神経に痛覚を伝達する。おなかをなだめようにも、おしりから手を離すことができない。これ以上ないと思っていた激しい痛みがさらに強くなり、おなかを内側から締め付けていく。
そして、便意も弱まるどころか一層強くなっていく。
高まり続ける痛みと圧力が、彼女の精神力を一瞬上回った。
ビュル…………ブジュッ…………!!
「っ…… ぁあっ…………!!」
おしりの穴が開いてしまった感覚。
力の入れすぎで感覚を失っている指先ではなく、肛門の周りに湿った感覚が広がる。
グギュゥグルルルルルルルルルルルグピィーーーーッ!!
わずかに肛門を開かせて勢いづいたのか、さらなる圧力がお腹の奥から押し寄せてくる。
(だめ、だめ、ほんとに漏れちゃう……だめっ!!)
それを必死に押さえつける春希。
再び絶望的な均衡が訪れる。
「くぅ…………んっ……っく………………!!」
キュゥーーーーーッ……グキューキュルルッ……
キュゥゥゥグキュルルキュルーーーーーーーーーーーッ……キュルーーッ……
10秒の静止の後、彼女は内なる圧力をふたたび押し返した。
わずかに肛門が開いた際に少しだけ便意が和らいだため、ぎりぎりのところで便意の大波に耐えきることができたのだった。
(早く…………早く、トイレ…………!!)
次の波が来たらもう耐えきることはできないだろう。便意が治まっている今のうちにトイレに駆け込むしかない。
彼女の経験上、少しちびった程度なら厚手のパンツが水分を吸収してくれて、その外側の着衣は無事に済むことが多い。このままトイレに駆け込めれば、被害は最小限で抑えられる。
グギュルギュルゴロゴロロロロロロギュルーーーッ!!
腹痛は治まるどころか更に強くなっている。おしりを押さえていた手でおなかを擦りながら、彼女は公園の中へ踏み込んだ。白い雪が地面を覆っている。
10歩でトイレの建物の角にたどり着く。
最短距離で角を曲がり、手前側にある女子トイレの入り口をくぐる。
要する時間は15秒程度。次の便意の波が来る前には便器にしゃがみこめる。
彼女は、最善の手段を実行したはずだった。
「え…………っ………………………………」
「どう……して………………?」
トイレの入口に、白いシャッターが下ろされていた。
あと10歩先に見えるはずの個室とその中にある和式便器を、視界から遮る白い壁。
代わりに目の前にあったのは、激しい痛みに浮かんだ涙がぼやかせた赤い文字。
『冬季閉鎖』
『このトイレは冬期の間、凍結防止のため閉鎖します』
『12月1日〜3月上旬』
(そんな…………そんなの…………うそ…………ここまで…………来たのに………………)
固い言い回しだが、書いてあることは小学4年生にも理解できる。
それはすなわち、彼女が求めていたトイレが、使えないということ。
公園のトイレは使えない。
彼女に自宅や他のトイレまで歩くだけの時間は残されていない。
そこから導かれる結論は一つだった。
(もう…………がまん…………できない………………!!)
ギュルゴログギュルッ!! ギュルルピィィギュリリッ!!
グギュルルルルゴロゴロゴロギュルッゴロロロロロロロッ!!
おなかが崩れ落ちるように下る音が響き、同時に猛烈な便意が襲ってくる。
無意識に震える手をおしりに当てる。
「あ…………っ………………だ……め…………あぁっ!!」
だが、彼女の抵抗はそこまでだった。
トイレに駆け込む望みが潰え、絶望に満たされた彼女の精神力は、指先を肛門に食い込ませることはできなかった。
内側から開こうとする肛門。意識とは無関係に強まる腹圧。
(…………だめ………………………………でる……!!)
ビュルルッ!
ビチビチビチブビィーーーーッ!!
ビュルビュルルルルッビチャビチャビチャビュルブビューーーーゴポゴポゴポッ!!!
あまりにもあっけなく、崩壊の時は訪れた。限界を超えた我慢を支えていた精神力が、目の前に立ちふさがる壁によって失われた時、もはや水状の便を肛門の内側に留めておくことはできなかった。
茶色い水分が肛門から溢れ出し、パンツの中に広がる。厚手の白いパンツは水分を吸収し始めるが、放出される勢いの方が圧倒的に強かった。肛門の周りを一瞬で温かい液体が満たし、その前後に黄土色の領域が広がっていく。
「あ……あぁぁ………………」
ブジュルルルルルルルルブビィィィィィィィィッ!!
ビュルッブビューーーーーーーーーッビチビチビチッ!!
ビュルルルルルジャーーーーーーーッブジュボボボボッゴポポポポッ!!
ジャァァァァァァビシャビシャビシャビチャビチャッ!!
わずかな未消化物以外はほとんど水そのものの水下痢便。肛門直下のパンツの吸水量が限界に達し、その外側のレギンスに浸透し、それすらも突き抜けるのに時間はかからなかった。
着衣の中で弾ける音とともに、レギンスの脚部を黄土色の筋が伝い始め、それだけではなくお尻の穴の位置から地面に向けて水流がこぼれ始めた。白い雪の上に黄土色の雫が落ち、その数が1つから徐々に増え、一つになって大きな黄土色の池を作っていく。
(だめ…………ぜんぶ………………でちゃう………………)
ブシャビチビチビチビィーーーーーーーーッブジュブジュブジュッ!!
ビュルッビチィーーーーッビシャーーーーーーゴポポポポポポブジューーッ!!
ゴポッブジュルルルルルルルブシャァァァァァァァブビビビィーーーーーーーーッ!!
ガクガクと震える脚が少しずつ折れ、春希の小さな体はその場にうずくまった。
その間にも間断なく流れ出る水状便が、すでに汚物で一杯になったパンツの中で渦巻き、パンツの両脇からレギンスの内側に次々とあふれ、さらに布地を透過した水分が服の外から両脚を伝って流れ落ちていく。
彼女はすでに、取り返しがつかないほどにお漏らしをしてしまっていた。
ギュルルゴロログギュルーーッ!!
ギュルルルグピィーーッ! ゴロロロロロログギュルルルッ!!
「う…………うぅっ…………!!」
ゴボッグボボブジュルルッ!! ビュルッビシャァァァビチビチブビィィィィッ!!
ジャァァァァァァァァァァァブビビビビィーッ!! ビュルーーーーーッビュルビチャビチャビィィィッ!!
ブジューーーーーゴボボボビュビチィーッ!! ブパッビチビチブビィィィィィィィィィィィィィィィッ!!
しゃがみ込んだ彼女のお腹に我慢を続けていた時と同じかそれより強い痛みが襲いかかる。もはや耐える体力も精神力もなく、彼女は無抵抗に水便を下着の中に吐き出した。
本当なら、あと10歩進んだ場所で同じ体勢を取っているはずだった。個室の鍵を閉め、和式便器にまたがり、パンツを下ろし、飛沫を飛び散らせながらも安堵に満ちた排泄を行っているはずだった。しかし現実には、彼女はおしりを水便で汚れきったパンツで包み、屋外で雪の上に黄土色の雫をこぼしながらお漏らしを続けていた。
(おなか痛い…………まだ…………まだでる…………)
ゴポポポッブリリリリリリリリリリリブジューーーーーーーーーーッ!!
ビュルビュルルルビュビィーーーーーーーーッ!! ビュルルルビチチチチチチチチブジュルーーーーッ!!
ブバッビュルッビチィィィィィビュルルルルッ!! ジャーーーーーーッビチチチチチチブジューーーーーッ!!
ブシャーーーーーーーーーーーーッビュルルルルルルッゴボッゴポポゴポゴボボボボッ!!
水便が止まらずパンツの中に注ぎ込まれる。すでに前から後ろまでほとんどの領域が汚物の色に染められてしまっている。そして、しゃがみ込んだために下に膨らめなくなったパンツの中で、重力を上回る腹圧が汚物を背中側に押し上げ、パンツの後ろから黄土色の水便を溢れ出させた。勢いよく溢れ出した便はレギンスやスカートの外側を流れ落ちていく。
(い、いや…………だめ…………脱がなきゃ…………!!)
ブピッビュルルビチィィィィィィビチィーーーーーッ!! ブパッビチィィィィィィィィィビシャアアアアアアアアアアッ!!
ビュルブシャーーーーーーーッブジュビチゴボボッ! ブジューーーーーーーッ!!
ブジュルルルルルルルルルルブビィィィィィィィィッ!! ブジュボボボボボボボボボッ!!
このままではスカートやパーカーまで汚れて外を歩けなくなってしまう。おぞましい感覚におしりを覆われながらも、かすかに残る理性で彼女はレギンスとパンツのウェストを一度につかみ、ずり下げ始めた。すぐに、おしりの遥か上、尾てい骨を上回る高さにまで肌を汚した黄土色が現れる。ぐちゃぐちゃの未消化物を受け止め、白い部分がなくなったパンツが現われ、その先に、今なお水便を吐き出し続けているおしりの穴が大気中に顔を出した。
ゴロゴロピーーーーーギュルルルッ! グギュルーーッ!
ギュルルルルルルグルルルルゴロロッ!! ゴロロロロロロロロピィーーーーッ!!
「………………うぅぅっ!!」
ブシャビュビュビシャーーーーーーーーーッビュルルルルルルルルルルビィィィィィィッ!!
ビュルッビュビシャーーーーーッブシャァァァァァァァァビチィーーーーーーーーーーーッ!!
ブシャビュルーーッビシャーーーーーーーーッビチィーーーーーーーッ!! ビュルーーーッブシャァァァビュルルルッ!!
ブビィビシャビュルルルルルルッ!! ブシャッビチャビシャーーーーーーーーーーーージャーーーーーーーーーッ!!
肛門が解放されると同時に、まだ治まらない痛みに襲われ、彼女は腸内の汚水を一気に吐き出そうとした。すでに大量の汚物がパンツの中に注ぎ込まれていたにも関わらず、衰えないどころか一層強い勢いで水便が地面に叩きつけられた。厚さ3cmの雪を溶かすより早く噴射の勢いで吹き飛ばしてコンクリートの地面を露出させ、その上を黄土色で塗りつぶしていく。
「んっ…………うぅぅ…………」
ビィィッ!! ジャアッ!! ブシャビシャーーーーーーーーーーーッ!!
ブシャッビュルルルルルルルビシャーーッ!! ビュルッビチィィブビューーーーッ!!
ビシャーーーーッビチャブシャァァァァァァジャアアアアアアアッ!! ビィーーーーッビュルルルルルルッ!!
おしりに冷気が伝わるほど地面に近い位置から、自らが作り上げた黄土色の水たまりに向けて勢いよく水便を噴射する。その結果、まだ無事だったレギンスの足首近く、その下にわずかに覗く白い靴下、白地にピンク色のマジックテープの靴を、黄土色の飛沫で汚し尽くしていくことになった。だが、その勢いを止めるために肛門を締める力はもう春希には残っていなかった。
「う…………うぅぅっ………………」
ビュルーーーーーーーッビシャビシャビシャビシャブシャーーーーッ!!
ビシャビシャーーーーーーーーーービュルビチィーーーッ!! ブビューーッ!
ブシャビュルビュルルルルルッ!! ビュブシャァァァァァァァァビシャアアアアアアアアアアアアアアッ!!
春希が排泄し続ける水状便が、付近の雪を同じ色に染めながら溶かしていく。その領域はしゃがみ込んだ両足の周りに盛り上がった雪にまで届き、靴の下部を黄土色の池に沈め始めた。おなかが弱い春希は野外で排泄に及んでしまうのは初めてではなく、普段なら靴の汚れを最小限にするよう脚を動かしたりできるのだが、今は我慢の果てに現れた白い壁に打ちのめされ、気力が尽き果ててしまっていた。彼女は苦しむ腸が震えるまま、水状便を吐き出し続けることしかできなかった。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…………ぐぅぅっ………………」
グルルッ!! ゴロギュルルルピィーーーーーッ!!
ピーギュルルゴロロロロロロロッ! グピィィィゴロギュルルルルルルルルルッ!!
ブシャーーーーーーーーーッビチャブシャーーーーーーーーッ!!
シャァァァァァァビュルーーーーーーーーーッ!! ブシャッビチャブシャッジャアアアアアアアアアアッ!!
ビュブシャーーーッビィィィィィィィビシャアアアアアッ!! ビュルッブシャーーッビシャーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!
排便が途切れたかと思うと腹痛に襲われ、再度高まった便意が次の排泄を呼び起こす。終わりのない二拍子がひたすらに少女を消耗させ、両足の間の水便の海を広げていった。
「ぐぅぅ………………うぅ…………」
ブピッビィィィィィビュルーーーーーッ!! ブシャビシャーーーーーーーーーーーーーーッブシャーーーーーッ!!
ビシャーーーーーーーーーッビュルーーーーーーーーーーッジュビビビィッ!!
ビシャビシャビシャビィィィジャアアアーーーーーーーーーーーーーブビブビブビブーーーーッ!!
凄まじい勢いの排泄が続いていた中、いきなり肛門から破裂音が響き渡った。水便ではなく大量のガスがおしりから飛び出したのだった。水便とガスが交互に排泄され、ついに水状便の排泄が途切れた。直腸に押し寄せていた汚水が、一時的かも知れないが空になったのだった。
キュルグキュルルルルキュルーッ……キュゥゥゥゥピーーーーーッ……
(…………まだ…………おなか痛い…………でも……早く……このままじゃ……!!)
まだ腹痛は続いており、再度便意に襲われる可能性が高いことはわかっている。しかし、野外でおもらしした姿のまま排泄を続けることは、わずかに気力を回復した彼女の羞恥心が許さなかった。一刻も早く後始末をして家に帰らなければ。
(!!…………ど、どうしよう…………こんなに…………)
視線を下に下ろした少女の目の前におぞましい情景が飛び込んできた。レギンスの中のパンツは白い部分が見えないほど黄土色に染まり、水分を吸われた未消化物が赤や黒や白の細かい破片となって残っている。レギンス自体も内側はほぼ足元まで水状便が伝っており、裏地だけでなく表まで元のベージュ色が黄土色に変わっている。
彼女の経験の中でも数えるほどしかない壊滅的なおもらしだった。
(…………と、とにかく…………早く…………)
早くこの場を離れるため、何をすればよいか必死に思考回路を巡らせる。彼女が使える道具は、ランドセルの中に入っているポケットティッシュが1袋と、替えのパンツが1枚と、汚れ物を入れるためのビニール袋が1枚。とはいえ、これはあくまでの平時の備えであって、トイレに紙がなかったとか少しちびってしまったなどの場合の緊急避難には十分でも、壊滅的な被害を回復できるものではない。
この範囲でできることは、とにかくおしりを拭いて、汚れた服は袋に入れて持ち帰るくらいしかなかった。
水便の池から立ち上っていた湯気は消え、辺りは冷たい風に包まれている。濡れたままむき出しになったおしりと下腹部が冷気にさらされ、体の奥底までが震えているように感じた。
「ぐすっ…………」
涙をこぼしながら腰を少し上げようとすると、おしりから茶色の雫がぽたぽたと落ち、ふとももに汚水が流れ落ちる感覚が走り、慌てて再びしゃがみ込んだ。まずは汚れが酷いところを拭いてからでないと、服を脱ぐこともままならない。
ランドセルを汚水の池から少し離れた雪の上に置き、中からティッシュを取り出して、まず1枚目を手に取る。汚れた範囲を目視で確認すると、前方が割れ目の上まで汚れているのがはっきりとわかる。
「うぅぅ…………」
汚れを広げないように前から汚れの中心部に向けて拭き始めたが、おしりの穴にたどり着く前に白い部分がなくなってしまった。仕方なく次を取り出して、今度は後ろから拭き始める。汚れの範囲が見えず、かなり上の部分に紙を当てたが、指全体が冷たい感覚に覆われ、慌ててもっと上から拭き直した。
やっとおしりの穴を拭けるようになったが、おもらしの中心地だけに汚れ方もひどく、ティッシュ3枚を使ってなんとか滴り落ちるような汚れは拭き取ることができた。だが、まだ拭けば紙に新たな汚れがうっすらと見えるところで、完全に拭ききるのは難しそうだった。ティッシュの残りは1枚しかない。
(は、早く脱がなきゃ…………)
立ち上がって汚れたレギンスを下ろし、片足ずつ靴を脱いでパンツごとレギンスを脱ぎとっていく。脚の内側はかなりの汚れに侵されており、ティッシュ1枚で拭ききれるとは思えない汚れ方だった。それでもやるしかない。あっという間に黄土色に染まったティッシュで、目立つ汚れを除く代わりにうっすらと汚れを広げながら脚を拭いていった。
「…………あっ…………」
悲惨なことになっているレギンスとパンツを改めて直視する気力はなく、そのまま黒いビニール袋に入れる。あとは、新しいパンツを履くかどうかだが、どう考えても汚れを拭ききれておらず、汚すために履くことは避けたかった。しかし、履かずに家まで帰ることでお腹をさらに冷やしてしまったら……。
ゴロピィーーーーギュルルルルグギュルルッ!!
ゴロゴロギュルーーーーーーーーーーーーッ!! グギュゥゥゥゥゥグギュルーーーーーーッ!
「っ!!」
彼女の逡巡は正しかったのかもしれない。冷やされたお腹は、家まで歩く時間を待つことなく悲鳴を上げた。
同時に襲ってくる強烈な便意。
トイレに行きたい。トイレで出したい。和式でも男女共用でも汚くても紙がなくても何でもいい。
トイレに。
ビュルッ……ブビビッ!!
「あぁ…………!!」
彼女のささやかな願いは、無情な白い壁に遮られていた。
彼女の悲劇を見届けた後も、あとわずかな距離にある便器への道を、閉ざし続ける壁。
そこに悪意はなく、ただ冷たさのみが屹立している。
(だめ…………もう…………)
スカートの裾をめくりあげ、むき出しの下半身を晒しながらしゃがみこむ。
しかし、疲れ切った心と体は、その動作を完了するよりも早く限界を迎えた。
「あ…………あぁ…………」
ビシャーーーーーーーーーーーーーーーーッビチビチビチブビィィィィーーーッ!!
ブビューーーーーーーーッ!! ブシャァァァァァァァァビチッビィィィィッ!!
ブビィィィィビシャビシャビシャビューーーーーーーーブシャビシャーーーーーーーーーッ!!
中腰の体勢から水鉄砲のように斜め45度に黄土色の水流が噴射される。雪の上に飛沫が飛び、わずかに溶かしながら染み込んで、まるでかき氷にかけたシロップのような光景を作り出した。少しずつしゃがみ込みながらも、水便の噴出は止まらない。黄土色の便は50cmにもわたって雪の上を汚していき、すっかり冷たくなった同じ色の池と一体化した。
ゴロッゴロゴログルルルルッ!! ゴロログルルグギュルーーッ!
ギュルギュルルルルッ!! グギュルルルピィーーッ! グピーーギュルーッ!!
「うぅ…………んんっ………………!!」
ブピッビュルーーーーーーッビシャアアアアアアッ!! ビィーーッ!!
ビシャビチャビシャーーーッビィーーーーーーッ!! ビチィィィブビューッ!!
ブジャッビュルジャーーーーーーーーーーーーーーーッ!! ブジャッビュルルルビシャァァァビシャアアアアアアアッ!!
ブシャブシャーーーーーーーーーーーーーーッビシャビチィーーーーッ!! ブシャビチビチビチビチビチブブブブブビィーーッ!!
しゃがみきった直後に一段と強い腹痛に襲われ、凄まじい勢いで水便を吐き出してしまう。せっかく綺麗にした肛門を汚水の奔流が駆け抜け、茶色く染まったティッシュの白い部分を必死に探して拭いたおしりの曲線を、肛門から流れ落ちていく水便が汚していく。吐き出した水便は黄土色の池の水を跳ね上げ、おもらしの痕跡を拭い去ったおしりやふとももにまで飛沫を飛ばしていく。
もう後始末に使える紙はなかった。それでも水便はとどまることなく溢れ出て、汚れをさらに増やしていく。
「う…………うぅ……………ぐすっ………………あぁぁぁぁっ………………」
ビシャビチャビューーーーーーービシャーッ!!
ブシャッビチィーーーーーーーーッブシャァァァァァァァァァァァビュルーーーーーッ!! ビュルッジャアアッ!
ビシャビチィーッビチャビィーーーーーーーッ!! ブシャーーーーーーーッビィーーーーーーーーッッブビィーーッ!!
ジャーーーーーーーービチィーーーーーーーッ!! ブシャッブシャァァァァァビーーーーッブビッブビビビビィーーーーッ!!
少女の嗚咽と、それを上回る音量の排泄音が、雪の降る静かな公園に響き渡った。
「…………………」
彼女はうめき声を出す気力も尽き、ただ便意を感じるままに排泄を続けていた。
体力が失われるのと同時に激しいお腹の苦しみが緩和されていき、少しずつ悲惨な排泄は終わりに近づいていった。
2度目の排泄が始まってから2分35秒後、ほぼ途切れずに続いていた放水が終わり、断続的な放出が始まった。肛門から流れる水が途切れるたびに強烈な破裂音が奏でられた。
4分12秒後、肛門に残っていた水が内側からの気体に押されて水風船のように膨らみ、破裂音とともに弾けて飛沫を撒き散らし、ついに2度めの排泄が終わった。
4分35秒後、彼女が汚れたおしりのまま立ち上がった。涙で滲んだ目で地面を見て、次の瞬間には目をつぶってランドセルを肩に引っかけてビニール袋をつかみ、一目散に駆け出した。
彼女がしゃがみ込んでいた場所には、直径60cmにわたって雪を完全に溶かした水状便の海が出来上がっていた。さらに、トイレとは反対方向に、長さ50cm、幅5cmにわたって黄土色が染み込んだ雪が伸び、周囲10cmほどには直径数mmの染みが広がっていた。水状便の海に浸かっていた靴は同じ色に汚れており、雪の上を駆けていった19cmの足跡は、数十歩にわたって黄土色に染まっていた。
公園を駆け出してから7分35秒後、春希はやっと家にたどり着いた。
その両脚には、帰路の途中でまた便意を催し、肛門から漏れ出した黄土色の水流が2本ずつ伝っていた。
ランドセルとビニール袋を玄関に放り出してトイレに駆け込み、便座に座ると同時に肛門が全開になった。10分前に雪の上に描きあげた汚水の水彩画を、彼女は再び洋式便器の中に作り上げていった。
公園のトイレに駆け込めず、寒風の中で長時間の野外排泄を余儀なくされた春希。
彼女のおなかは冷え切り、完全に下りきってしまっていた。
激しい下痢が治まらず、彼女は1時間の間自宅のトイレから出ることができなかった。
便意が治まって拭いて立ち上がって腹痛に襲われて慌てて座り込んで汚水を注ぎ込むことを何度も繰り返した後、やっとトイレを後にすることができた。しかし、汚れた下半身を洗うためシャワーを浴び始めて間もなく便意がぶり返し、裸のままトイレに逆戻りすることになった。
食卓につくこともできず、母に用意してもらった温いスポーツドリンクととゼリーを口にしてベッドに横になった瞬間、激しい腹痛に襲われて身体を痛々しく折り曲げ、次の瞬間にはトイレに駆け出していた。
下痢は一晩中どころか翌日になっても続き、学校を欠席してトイレに通い続けた。昼前に母とともに小児科に向かったが、受付をする間もなくトイレに駆け込み、脱水のため点滴を受けている間に便意が我慢できなくなり、処置室の中でポータブルトイレにしゃがみ込んで水様便を吐き出してしまった。
ふらつきながら家に帰った春希を欠席を心配した千秋が見舞いに来たが、トイレの壁越しに話すことしかできず、顔を合わせることはできなかった。
その翌日もお腹の具合が悪いままで、なんとか学校に通えるようになったのはお漏らしをしてから3日後の木曜日だった。
汚した跡が心配になって公園のトイレを見に行った春希は、黄土色の汚物の海が新たな雪で覆い隠されているのを目にし、掘り返したりせずにその場を離れた。
トイレの入口は、彼女が悲劇に見舞われた時と同じシャッターで閉ざされ、同じ『冬季閉鎖』の貼り紙が来訪者を拒んでいた。
彼女が初めて経験する雪国の冬は、まだ始まったばかりだった。
(終)