悠里のともだち

トリック・オア・トリートのなるびさんからの寄贈作品




秋元 悠里(あきもと ゆうり)

10歳 教育大付属小学校4年
身長:130cm 体重:25kg

比較的おとなしめな少女。
小学1年生の時から胃腸が弱くなり、頻繁にお腹を下すようになる。
その体質から劣等感を感じて心を開ける友人がなかなかいない。
勉強は結構できる方で、エリート小学校の中でも中の上クラスの成績。
…しかし、長いテスト時間となると下痢で集中できない事も多く、成績にばらつきがある。


相川 麻里(あいかわ まり)

10歳 南青山台小学校4年
身長:134cm 体重:30kg

動物が大好きな明るい女の子。
勉強は苦手。特に算数が大嫌い。割り算をずっと解いていると怒り出す。

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<1>
ここはとある閑静な住宅街。
その一角にある結構立派な一軒家で家族と共に暮らす少女がいた。
その少女は「秋元 悠里(あきもと ゆうり)」という小学4年生。
外見はどこにでもいるような普通の女の子。
真っ黒の髪の毛を二つおさげにした、明るそうな少女である。

…しかし、悠里は小学1年生の頃から胃腸の調子が悪く、しょっちゅうお腹を下す体質になっていた。

原因はよくわからない。
幼稚園の時はなんともなかったのに、小学校に入学して給食になったからであろうか。
たびたびトイレに駆け込むようになった。
食べるものもアイスクリームや牛乳など、お腹に刺激を及ぼすものを食べてしまうと確実に下す。
悠里自身、アイス・牛乳が大好きなだけに、とても辛い状況だと言える。

好きなのに食べることができない…。

悠里は食べたい欲求を封じ込めるしかないのである。
…けど、まだ我慢できない小学生な年頃。その葛藤に負けて食べてしまう時もある。
その時は、確実に下痢となって自分に跳ね返ってきてしまう。
…とまあ、そんな体質の少女が、自分の部屋で、なにやら嬉しそうに準備していた。

「うーん、何着ていこうかな…。麻里ちゃんはどんな服を着てくるのかな?」

どうもそのお友達であろう「麻里ちゃん」とどこかに出かけるらしい。
今は夜なので、恐らく明日だろう。さすがに小学4年生の夜遊びは考えにくい。

実は明日、悠里はともだちである「麻里ちゃん」と山頂の牧場に行くことになっていた。
この「麻里ちゃん」とのおでかけは、今回が初めてであり「麻里ちゃん」とともだちになったのはごく最近である。
「麻里ちゃん」は近所に住む「相川 麻里(あいかわ まり)」という小学4年生の少女である。
通う学校が違っており、悠里は駅向こうの私学で、麻里は近所の公立の小学校である。
知り合ったのは、近所で行われた自治会のバザー。
ここで里親探しの催し物をしており、色んなペットが里親探しで集められていた。
ふれあいは自由で、たくさんの子供たちが「かわいいかわいい」と触ったり抱いたりして楽しんでいた。
少し人見知りで恥ずかしがり屋な悠里は、なかなか中に入ることができず戸惑っていた。
その中に動物大好きな麻里が、なかなか中に入ってこない悠里を気遣って、抱いている動物を一緒にふれあいながら遊んだ。

こうして解け込んだ事がきっかけで、悠里は麻里に心を開くことになった。

それから、時々近所の公園で遊ぶようになり、悠里自身は麻里を「親友」と心から決めて信用し始めていた。

ある日、動物大好きな麻里が、街向こうの甲六牧場に行こうと誘ってきた。
初めての大きなイベントの誘い。
悠里は喜んでOKした。

そういう事で、悠里は嬉しそうに準備している。
ただ…不安がある。

ギュルルゥゥ…

「あん…」

悠里の下腹部が音を立てる。
小さな吐息交じりで声を上げる悠里。
いつもの辛い「下痢」である。
洋服を選んでいる途中に、悠里はトイレへと駆け込む。

パジャマのズボンに手をかけてパンツと共に下ろし、便座を開けて座る。
余裕に間に合ったため、安堵のため息と共に悠里の小さなお尻から下痢便が排泄される。

ビュルルルゥゥ…
ビチャビチャビチャ…

量はそれほどではないが、形が未熟な下痢便がベチャベチャと便器内に排泄される。
悠里はウォシュレットでお尻を綺麗にして後始末をした。
そして、再び部屋へと戻る。

その不安…それは悠里の胃腸の弱さであった。

当然ながら麻里は悠里の胃腸の弱さを知らない。
ゆえに「山頂の牧場」という、いかにもトイレが少なそうな場所をチョイスするのには何一つおかしな点は無い。
しかも、山頂では羊やヤギ、牛などが沢山いるらしく、景色もすごくいいらしい。
おとといの公園で、麻里は楽しそうに明日行く牧場の内容を語ってくれた。
ただ、その後の麻里の言葉に恐ろしい言葉が付け加えられた。

「…そんでね!羊とかヤギとか牛の、しぼりたてのお乳が飲めるんだよ!!すごくおいしいらしいから一緒に飲もうね!」

悠里の背筋に戦慄の寒気が走った。
一瞬、不安な表情を浮かべた悠里だったが、隣で光り輝く麻里の満面の笑みを見ると、表情を濁すわけにはいかなかった。
当然麻里には悪気は無いのだが、悠里にとっては地獄絵巻になりうるイベントとなる。
けれど麻里と一緒に行けるという嬉しさは、他の何事にも変えられないものがあった。

そのため比較的慎重な悠里。
山頂ということで、この暑さの残る立秋であっても、暖かい格好をしないと体を冷やすであろう予想をする。
そして、もし万が一お漏らししてしまったとしても、わかりにくい茶系の服装を選んだ。
このときばかりは、さすがに自分の体質を恨んでしまった。

(お願い…明日は穏やかに過ごさせて…神様…)

その日、悠里は期待と不安を胸に抱きながら床に就いた…
と思ったら、再び腹痛に襲われ、トイレへと駆け込む。
悠里は期待や緊張が極度に高まると、便意に襲われてしまうという体質も兼ねて、とても辛い生活を強いられている。

ビビビィィーーー!!
ビチャビチャビチャ…!!

悠里の切ない排泄の音が響き渡った。

<2>
次の日。
いよいよ麻里とのお出かけの時がやってきた。

「悠ちゃん、ご飯どうする?」

母が悠里に話しかける。
朝ごはんを食べるか食べないかを選択させる。
それは悠里の体質を理解した上でのことである。

正直、母としては悠里に朝食をしっかりと摂ってほしい。
しかし、出先でもよおして排泄する量が増えると、悠里が苦労する。
そんな辛い悠里の体質を精一杯気遣って、消化の良い食事を準備していた。
その母の気遣いに大きく感謝し、悠里は朝食を食べ始めた。



「いってきまーす!」

悠里は元気良く家を飛び出した。
待ち合わせの麻里宅へと向かう。
念のため、朝食後に排泄は忘れない。
持ち物はポシェットに代えの下着とポケットティッシュ8個をギュウギュウに詰めている。
消臭スプレーも忘れない。
白いブラウスに茶色のベスト。
ベストに合わせた茶色のスカートに紺のハイソックス。
靴は牧場を予想して、白のスニーカーを選択。
足元だけが軽装で、全体的にフォーマルな印象を受ける服装だ。

軽やかに閑静な住宅街を走りぬけ、麻里の家の前に到着。

ピンポーン…
呼び鈴を押す。

「はーい、どちら?」
「…あの!秋元ですけど麻里ちゃんいますか?」
「あ!悠里ちゃんね!ちょっと待ってね…」

声の主である麻里の母は大声で麻里を呼ぶ。
その声に反応してドタドタと物音がする。
その音は玄関へと近づいてきて…

「お待たせ!悠里ちゃんおはよう!!」
「…おはよう、麻里ちゃん!」

二人とも満面の笑みで互いの手を握る。

「悠里ちゃん、なんかきっちりとした服装だね…お金持ちみたい!」

そんな麻里の服装は、悠里とは対照的にデニムスカートに半袖のTシャツ、足首までの短いソックスにスニーカー。
まさにスポーティな格好そのものだった。

「…麻里ちゃん、それじゃ寒くない??」
「えぇ!?こんなに天気よくて暖かいのに??悠里ちゃんこそ暑いんじゃないかなー」

お互いのファッション(?)を比べながら笑う二人。
とても仲睦まじき雰囲気が漂う。

「にゃー…」

麻里の足元に真っ白な白猫が擦り寄ってきた。
まるで二人の楽しそうな会話の仲間に入れて欲しいかのように、二人の間に割って入ってくる。
麻里はその白猫を軽々と抱き上げて顔を近づけ言う。

「ミューちゃん。今日はちょっと遊んであげられないよ。悠里ちゃんと一緒に遊んでくるから」
「ニャー…」
「そーいうことで、ちゃんとお留守番しててね…とは言っても、どっか勝手に散歩しにいくんだろうけど」

ミューちゃんと呼ばれた白猫を足元へとゆっくりと降ろして、麻里は再び悠里に向き直り、笑顔いっぱいに

「じゃ、行こっか!」
「うん!」

二人は駅へと歩いていった。

<3>
駅に着いた二人は切符を買って、電光掲示板に映し出された内容を見る。
今日は休日なため、平日より電車の本数が少ない。
悠里たちが乗る電車は、さっき出て行ったばかりらしく、次の電車まで20分はある。

「あぅ…さっき行ったばっかりみたいだね…20分は待たないといけないね」
「…別にいいよ。時間制限ってないんだよね?だったら待とうよ」
「そうだね…お話してたら多分すぐに過ぎるよ」

二人が駅のホームに座って他愛のない話にふけっていると
グウゥゥ…

悠里の下腹部から忌々しい音が鳴る。
いきなり会話が途切れ、悠里は脂汗を浮かべる。

「…どうしたの?大丈夫?悠里ちゃん」

麻里が心配そうに悠里の横顔を見る。

「…うぅん。大丈夫…ちょっとお手洗い行っておいていいかな」
「うん、そだね。私も行っておこうかな」
「…」

一緒に来てくれるのは嬉しいが、音や臭いが心配になる。
麻里に下痢症であることを悟られたくないという心配が少しあるが、とにかく今は用をたしておかなければならない。
二人は駅構内の公衆便所へと入っていった。

二人は隣同士のトイレに入り、ドアを閉める。
悠里は…立って我慢していた。
音や臭いを麻里に悟られたくないため、麻里が用を足すまで我慢しているのだ。
悠里の排泄はかなりの悪臭と音を有するため、そんなのを聞かれたり臭い悪臭まで知られたら、嫌われてしまうかもしれない。
じっと額に脂汗を光らせながら、ぐっと我慢する。
急激な便意は、肛門のすぐ手前まで迫ってきている。
生地の厚い茶色のスカートの上から、肛門を押さえてギュッとこらえる。

「麻里ちゃん…」

悠里は麻里の名をため息交じりで発した。
これには色んな意味が込められているのであろう。
そしてゆっくりと便器を跨いでスカートを捲くり、パンツに手をかけて準備する。
じっとその格好で固まっていると、隣のトイレの水が流れ扉が開く音がした。

麻里のトイレが終わったようだ。

「悠里ちゃん、先出とくね!」

そう言い残して手を洗って出て行く足音が聞こえた。
そして悠里は咳を切ったようにパンツを下ろしてしゃがみこむ。
溜まっていた下痢便が一気に開放されて便器に叩きつけられる。

ブビィィーー!!
ブババババッ
ビチャビチャ!!

悠里は目を閉じて、股下に広がる大惨事を感じていた。
意識して我慢していた分、ものすごい勢いで排泄される。
小さな悠里のお尻からは想像できないくらいの勢いで…。

ビチビチビチ…!
ビュルルゥゥーーー

第一波が終わって、一息付いた時、悠里は静かに目を開けて股下の惨事を見る。
下痢便が便器一面に広がって、点々と飛び散った茶色い点が便器の隅っこにこびりついていた。
幸い、悠里のソックスや靴をはじめとする衣服には飛んでいなかった。
悠里はほっと胸をなでおろすと…

ギュルルルゥゥ…!!

またしても急激な便意が襲い掛かってきた。
トイレットペーパーに伸ばしかけていた手を再び足にかけて、排泄する。

ブビビビビビィィ!!

強烈な悪臭が襲い掛かる。
慌てて悠里は水を流す。
水は悠里の排泄物を押し流していく。
その流れの上に、さらに悠里が排泄する。

ジャー!!
ビチャビチャビチャ!!

…どうしてか、なかなか止まらない。
お腹の調子がいつもより思わしくない。
タンクに水が溜まるまでに、さらにどんどん流しながら排泄する悠里。
少しもその場に排泄物を残したくなかった。
持っていた消臭スプレーをプシュプシュ巻き捲くって臭いも消そうとする。
なぜなら…

コンコン!!
ドアをノックする音。
悠里は予想していた。
長いトイレなので、麻里が心配してやってくる事を。
なんとか臭いは少しかもしれない。
あまり察されないかもしれない。
悠里はドキドキしながら耳をすませる。

「悠里ちゃん!大丈夫?もうすぐ電車来ちゃうよ!!」

そうだった。
電車を待っている最中だったのだ。
トイレすることばかり考えててすっかり忘れてた!

「…ご、ごめん!すぐ行くから…」

なんとか便意は消え去り、綺麗に後始末を終えてトイレを出る悠里。
長いことしゃがんでいたため、足がしびれてうまく歩けない。
白いスニーカーの中からピリピリとした電撃が全身を襲い始める。

「う…あ…!!ごめん!!」
「早く!早くしないと行っちゃう!!」

フラフラしながら歩く悠里を強引に引っ張る麻里。
駅のホームにアナウンスが響き渡る。

「2番線、電車が発車しまーす」

プルルルル…
プシュッ

扉が閉まってゆっくりと電車が動き出す。
電車が去った後のホームを見ると…

取り残された二人の少女がベンチに座っていた。

「むー!!」
「…ご、ごめんね…麻里ちゃん…」

ふてくされた少女とがっくりとうなだれる少女が、寂しいホームを虚しく彩っていた。

<4>
結局、さらに20分後の電車に乗ることになった二人。
休日の朝、比較的空いている車内の二人掛けの椅子に、やや険悪なムードを漂わせる二人の乗客がいた。

…悠里と麻里である。

乗り遅れたことに少しむっとした麻里。
何を言っても言い訳になってしまうため、ずっとうつむいたままの悠里。
時間はお互い無言のまま、過ぎ去ってゆく。
終始黙ったままの麻里は、売店で買ったファンタグレープをゴクゴク飲みまくっている。
2本買っていたのだが、悠里にあげる予定にしていたファンタオレンジも自分が飲む。

…かなり怒っているようである。

この険悪なムードに耐えかねた悠里。
なんとか口を開いて会話しようとする。

「…あの、麻里ちゃん…さっきは…ごめん」
「…」
「私のトイレが長かったから…電車に乗り遅れちゃって…」

ふっと麻里が悠里を見る。
すると二人の目がお互いに合った。
本当にすまなそうに、そして今にも泣き出しそうな悠里の目を見て、麻里は我に返る。
よくよく考えてみると、生理現象でどうしようもないことなのに、何を自分は怒っているのか。
自分が逆の立場だったら…

麻里はやや怒りっぽいが、冷静になると物事を深く考え直す性格をしている。
悠里はとても辛いに違いない。辛かったに違いない。
はぁ…と一息ため息のような呼吸をして、麻里は悠里に向き直り

「こっちこそごめん。誰だってあることなのに、プンプンしちゃって」

そう言って、またあの麻里スマイルを見せてくれた。
悠里はほっと安心して、必死にまた深く謝った。
麻里は途中まで飲んでいたファンタオレンジを悠里に分けた。
悠里は少し涙を浮かべながら、そのファンタオレンジをおいしく飲んだ。
すると…

グキュゥゥゥ…

(うそっ!!)
再び下痢が悠里を襲う。
悠里は苦しげにおなかを押さえてうつむく。

「…ゆ、悠里ちゃん??」
「…ご、ごめん!ト…トイレ!!」

悠里は駆け出して、電車内のトイレに向かう。
国鉄の新快速型車両のため、トイレが2つ設置されている。
悠里たちが乗り込んだ車両は、ちょうどトイレが設置されていた車両だった。
連結部の扉を勢い良くガラッと開けて中に飛び込む。
トイレは幸いにも「あき」の表示になっており、悠里は躊躇なく飛び込む。

痛い下腹部を押さえながら、一段高いその場所に飛び乗る。
そして銀色の便器を跨いでパンツを下ろす。
しゃがみこむと同時に、悠里の肛門から勢い良く下痢便が吐き出された。

ブババババ…!!
カンカンカン!!!

銀色の鉄っぽい便器に跳ね返る下痢便の音が悠里の耳奥に響き渡る。
今のところ急激に来る便意で、ちょうどトイレが近くにあることだけが幸いしている。
安心しながらも下腹部の激痛は悠里の表情を歪ませる。

ブリブリブリィィ!!!
ベチャベチャベチャベチャ…

このところあまり沢山食べていないのに、どうしてこんなにとめどなく下痢便が排泄されるのだろうか?
悠里は食べ物以外にも体の一部も一緒に出してしまっているのではないかと心配になる。

…すると

『次は甲六牧場麓前〜』

かすかに降りる駅のアナウンスが。
けれども悠里の便意は止まることを知らない。

ブリブリブリィィ…!!

(ど…どうしよう!!止まらないよ!!早く終わらせないと…!!)

焦れば焦るほどなぜだか出てくる下痢便。
ついには…

ドンドン!!

扉をノックというより叩く音。

「ゆ…悠里ちゃん!!早くしないと降りる駅だよ!!」

(わかってる!!でも…止まらないよ!!)

電車が甲六牧場麓前駅のホームへと入って来た。
ドアが開いて、数名の観光客が出てきて、走り去っていく。

甲六牧場麓前駅のホームに、悠里と麻里の姿はなかった…。

<5>
結局二人は乗り過ごしてしまい、一駅向こうから戻ってきた。
幸い、降りたらすぐに向かいのホームにてうまく連絡できたため、時間はそれほどかからなかった。
逆側から来る電車の乗客はさらに少なく、この駅で降りたのはこの二人だけだった。
時間帯からだったのかも知れないが、とにかく寂しさを感じた瞬間でもあった。

こんなこともあってか、二人はまたしても険悪なムード…と思えば違っていた。
あまりに悠里が酷い状態に思えたのか、麻里はかなり心配になっていた。
ここまで酷いと怒る理由なんて無い。
大切な友人が下痢で苦しんでいるのだというのに。

麻里はかなり冷静だった。

「本当に大丈夫…??」
「何度も…ごめんね。麻里ちゃん…」

涙を浮かべながら謝る悠里。
その涙は悔しさからか悲しさからか…。
二人は共に山頂へと向かうリフト乗り場へと辿り着いた。

「うわー!リフトだ!面白そうだね!!」
「…すごーい!!」

さっきまでの暗いムードは吹っ飛んで、一気に楽しいムードへと早変わり。
まだまだあどけない二人である。

リフトへは一人ずつ乗る。
山頂までおよそ20分近くだそうである。
二人はチケットを購入して、麻里が先にリフト乗り場へと滑り込む。

「お嬢ちゃん、乗れるかい??」
「平気!ここでお尻出して椅子に座ればいいんでしょ?」

係員の心配をよそに、麻里はウキウキしながらリフトを待つ。
リフトが少しずつ麻里のやや丸いお尻に向かって近づいてくる。

「せーのっ!」

リフトは麻里のお尻の位置より少し高い位置にあるため、麻里は小さくジャンプする。
…角度が悪かった。

ガン!!
「きゃあ!!」
麻里は前のめりになって倒れた。
失敗。

リフト全体が大きく揺れて停止する。
係員が非常停止ボタンを押したようだ。

「えへへ…」

麻里は恥ずかしそうに悠里を見て舌をぺロッと出した。
顔は真っ赤だ。
結局、麻里は係員に抱き上げられて乗せて貰った。
次の悠里も同じく、係員に手伝ってもらった。

ゆっくりと地面を離れるリフト。
足元には草原と森が広がる。

「うわー!!綺麗!!」

前にいる麻里が後ろを向いて、手を大きく広げながらリアクションしている。
悠里も同じく、この風景に圧倒させられる。

とても綺麗に晴れた青空。
下には森と大きく広がる草原。
ゆっくりと景色が流れながら、ほほを撫でるように吹き抜ける暖かい風。

…まるで空を飛んでいるようだった。

悠里は夢でも見ているような心地になって、自然とこれまでにないような笑顔になる。
前に居る麻里に、心の友人であると信じている麻里に、満面の笑みを送った。
麻里はそれに答えるように、綺麗な微笑みを返してくれた。

幸せだった。

今までこんなにも心のキャッチボールをしてくれる友達はいなかった。
悠里の通う私学はガリ勉気質な子供が募っているため、明るく遊びまわる麻里のような友達はいない。
学校内に友達がいない訳ではないが、テレビの話や流行の話をするくらいで、元気良く外で遊んだりする友達はいなかった。
麻里は悠里にとって、特別な親友になっていた。

だから、自分の体質で迷惑を掛けたくない。
たとえ、自分の体質が知られたとしても、麻里だけは友達でいてほしい…。
そう心に願っていた。
ただ、麻里は自分の事をどう思っているのかは、疑問ではあったが…。

とにかく、その疑問を吹き飛ばすくらい、麻里の事を大切にすれば、きっと想いは伝わる!!

そう信じていた。

今のこの綺麗な空を二人で飛んでいる時間がいつまでも続けばいいと思っていた…そのとき

グゥゥ…

その幸せな時間を吹き飛ばす、悪魔のうめき声が悠里の下腹部から発せられた。
(…いやだ…こんなところで…嫌だよ!!)

まだリフトに乗ってそんなに経っていない。
これからしばらく長そうなのに、こんなところで…!!
このリフトの状態では全く逃げ場は無い。
トイレなんて当然無いわけで、それどころか、包み込むような椅子の形から、身動きすらできない。
さらには少し後ろに重心がかかるような角度なため、体重が全てお尻に掛かる…。

…つまりは、悠里にとって一番最悪な姿勢と考えられる。

こんなところでお漏らししてしまったら…。
悠里は少しだけ最悪な結末を想像して、首を横にぶんぶんと振った。

(まだ、我慢できないと決まったわけじゃないよ)

楽しそうにこちらを見ながら、あの景色見て!!ほらほら!!と指を差しながら笑っている麻里を見る。
その笑顔はすべての不安を吹き飛ばしてくれるかのような笑顔だ。

…そうだ。これ以上麻里に心配や迷惑を掛けるわけにはいかない。

悠里は決意をしてキッと麻里に向き直る。
下腹部に住む悪魔と戦う決意を胸に抱きながら…。

<6>
リフトはやや半分くらいに差し掛かっていた。
ギュルギュルと音を立てる悠里の下腹部。
少しずつ熱いものがゆっくりと直腸に向かっているのを感じる。
その行進は最早止めることはできないが、なんとか遅らせることはできる。
不安定なリフトの上で、ぐっとおなかを押さえ、くの字にして前を見る。
キリキリと激痛を発する下腹部に意識を集中して、悠里は我慢する体勢を作る。

額にはキラキラと脂汗が滲み出す。
目には悔し涙がじわりと瞳を湿らせる。
この状態では残念ながら苦しすぎて笑顔が作れない。
苦しい意識の中、ちらりと前の麻里を見ると…

麻里は前を向いたままこちらを少しも見なくなっていた。
お腹を押さえ、苦しい表情を浮かべ…またしても下痢の前ぶれを見て嫌気がさしたのかも知れない。
麻里が悠里の事を「面倒な友達」という烙印を押したのかと思い、悲しくなる。

(やっぱり…迷惑かけてばっかりだもん…)

今度は悠里の目から悲しみの涙が流れ出す。
麻里に見放されてしまった悲しみは、他の何物にもかえがたい辛さであった。
そんな悲しみのさなかでも、下痢の悪魔は待ってはくれない。
グリュグリュと下腹部を震わせながら、下へ、下へと降りてくる。
あまりの痛さに悠里はさっきより強くお腹を抑えてうずくまる。

(うぅ…痛い)

もう麻里に見放されてしまったのなら、もうどうにでもなれと自暴自棄になりかけたが、そういうわけにもいかない。
見放されてしまったとはいえ、最悪な状況になってしまったのなら、また迷惑をかけてしまう。
せめて最後のこの時くらいは、我慢し通して麻里に全てを打ち明けてしまってスパッと見放してもらおうと考える。

悠里、最後の意地であった。

リフトの到着は、まだしばらくかかりそうだ。
果たして頂上まで持つのだろうか?
たとえ持ったとしても、頂上…リフトを降りた直後にトイレがあるのだろうか?
そのトイレはちゃんと水が流れるのだろうか…。

追い詰められた悠里には不安しか思い浮かばない。
下痢の悪魔たちは、もう肛門のすぐ側まで来ている。

(も…漏れちゃう…)

ほとんど限界を迎えた状態で顔を上げる悠里。
綺麗な景色は異常事態となっている悠里はそのままに、何事も無いようにゆっくりと流れる。
悠里の涙で滲んだ視線の先には、麻里の後姿が映っていた。
我慢の限界を迎えた悠里。必死に外へと出ようとする物質が、悠里の肛門から放たれた。

ブゥッ…!!

生暖かい感覚が悠里の脳裏に襲い掛かった…が、

(お、おなら…!?)

パンツには漏れた感覚が無いため、この放出はガスのみだったようだ。
とりあえずは最悪な状況は免れた。

(よ…よかった…)

おならが出たため、しばらく実弾が襲い掛かるまでに少しの余裕ができる。
悠里は閉じた穴を思い浮かべて集中する。
そしてお尻にキュッと力を入れて、目を閉じて我慢する。

(もうすぐ…もうすぐ頂上に着くよ…!!)

眼前に見えてきたリフトの降り場。
もう少し我慢すれば、この地獄から解放される。
涙目の悠里の瞳に、希望の光が戻ってきた。

しかし…

ギュウウゥゥゥ…

ゴール直前に便意が襲い掛かってきた。
そう簡単には行かせないと悪魔が囁いているかのようだ。
目の前に迫る降り場。
降り場には係員が居ない。

(係員のおじさんが居ないよ…うまく降りないと大変だ…大変だよ!!)

あのリフトの降り場でうまく降りなければ、そのまま乗せられて再び下へと戻ってしまう。
おまけに、下りのリフトを使用する人の列に見届けられながら、恥ずかしい瞬間を味わう。
なんにせよ、降りるのに失敗すれば、最悪な結末は免れることができないのである。
なんとしても降りなければならない。

もう悠里はリフトをうまく降りることばかり考えていた。
便意はもう限界。
今度は肛門の前で出たがっている物質は、確実に下痢便だとわかる感覚だ。
ジュルジュルとした液体のように熱く、まるでグルグルと溶岩のように悠里の直腸をかきわけながら外に飛び出すのを今か今かと待ち構えているのである。
とにかくリフトから降りて、素早くトイレへ…もしトイレがなければ草むらへと駆け込んで排泄すればいい。
排泄さえしてしまえば、しばらく安静にいられる。
麻里に見られても構わない!もう呆れられているのだろうし、全部打ち明けてわかってもらえればいい。
麻里ならわかってくれる。とにかくお漏らしだけは嫌だ!!

リフトに座りながらキュッと内股になり、我慢する悠里。
悠里の小さな白いスニーカーが小刻みに震えているのがわかる。
体の震えが足の先にまで連動しているのだ。

(もう少し…あと少しだから…!!)

あと少しで、前の麻里が降りれるくらいの距離に来たとき…

ガァン!!

リフトがいきなり停止。誰かが乗るのに失敗したのだろう。
その衝撃でリフトが大きく揺れた。

(あぁ…いやぁぁ!!)

リフトが前後に大きく揺れて、その衝撃で悠里は…

ブリッ…
ブチュチュゥゥゥゥーーーーー
ビュルビュルビュル…

もう降りれると完全に安心しきっていた悠里。
その期待は見事に裏切られ、大きなリフトの振動に驚かされて、肛門の我慢の糸がプッツリと途切れてしまった。
包み込まれている小さなリフトでの思い切ったお漏らし。
下痢便が完全密着しているリフトの椅子の隙間を駆け巡る。
水分が多めなため、悠里の座っている部分全てを一気に湿らせる。
下痢便の熱くジュルジュルの物体は、悠里のお尻の割れ目から股間にかけて全体に広がっていく。

ブブブブ…
ビチビチビチィィィーーーー

リフトに乗っている長時間ずっと我慢していた分、量と勢いは凄まじい。
お漏らしが始まった瞬間、もう我慢しなくてもいいという解放感も相まって、悠里の肛門が大きく開く。
薄く目を開き前の麻里を見たが、リフトの停止による衝撃や異変にも関わらず、ずっと前を向いたままだ。

…もう目すら合わせてもらえないのか…

悠里はくっと下を向き、涙を浮かべながら自分の下半身で起こる大惨事に意識を戻す。
(…もう、どうにでもなってしまえばいい!)
自暴自棄にも似た悠里のなげやりな態度は、次々とお尻の下から生み出される下痢便にも現れ始めていた。

ビュビュ…
ビチビチビチ…
ニュルニュルニュルニュル

悠里は、まるで生暖かい泥の上に座っている感覚にとらわれて、気を失いそうになった。
一気に立ち上る悪臭。
持ち物の消臭スプレーやティッシュでは、もうどうにもならない。全てが手遅れだった。
やがてこの悪臭は前に居る麻里の元に漂って、麻里を失望させることだろう。

汚い女の子「悠里」の正体を…。

終わった。何もかも。
お尻に貼りつくパンツの不快感や、スカートを汚す下痢便などの現実よりも、麻里に汚い姿を見られてしまうという事実が何よりも怖かった。

「ぐすっ…うぇぇん…」

悠里にはもう泣く他に何も選択肢が無かった。
ここでプライドも友人も何もかもを失ってしまうんだという絶望感…。
…涙が止まらなかった。

やがて再び大きな揺れと共にリフトが動き出した。
先に降り場へと到着した麻里は、ゆっくりと降りて小走りで小さな小屋の影に駆けていった。
きっと悠里が放つ悪臭が嫌になり、逃げてしまったのかも知れない。

次に悠里の番。
足をピンと下に向けて、リフトの端部分を持って下に押しやって降りる。

ニチチチチ…

「ひゃぁ…」

不快な下痢便の粘着感が、悠里の下半身全体を襲う。
とにかく降りなければ。
少し靴下まで染みた下痢便の汁が、悠里をさらに不快にさせる。
…ただ、あの下痢便に満ちたリフトに、下りで誰かが座る。

(ごめんなさい…)

申し訳ないことをしてしまった。
悠里はすまない気持ちでいっぱいになった。
自分の嫌な体質が、また誰かを傷つける。
もうここから消えたくなった。

「あ…そういえば麻里ちゃん…」

お尻の辺りに感じられる大惨事を確認せずに、悠里は麻里の消えていった小さな小屋の方面へと歩いていく。
歩くたびにパンツ内にべっとりと貼り付いている下痢便が揺れて気持ち悪い。
…が、そんなことより麻里の事が、麻里に全てを打ち明ける事が大切なんだ!

周囲から見えない小屋の裏に、麻里はいた。
やってきた悠里に気づいて麻里が振り返る。
なぜだか麻里は涙目になって、目は真っ赤に充血していた。
麻里の涙の理由を聞くよりも先に、悠里はついに打ち明ける。

「…麻里ちゃん…麻里ちゃん!!」
「あ…」

二人とも目を見合わせて固まる。
およそ5秒くらいだろうか、二人とも固まって動かなかった。
そして意を決して、悠里は麻里に…

「…ごめん麻里ちゃん。私、私…リフトでお漏らししちゃったの…」
「…」
「…私、昔からお腹が弱くて…すぐにお腹壊しちゃって…迷惑ばっかり…ひっく…ぐすっ」

そこから言葉が続かなかった。
けど、わかってもらえなくても麻里には全部伝えたい!

「…だから…私、汚くて臭くて…麻里ちゃん、もう嫌になったでしょ?だから…」

悠里がそこまで言うと、麻里はふぅとため息を付いて、何故だかにっこりと微笑んだ。

「…あのね悠里ちゃん…。実は…ほらっ」

麻里はデニムのスカートを指差して悠里に見せる。
麻里のスカートはぐっしょりと濡れていた。

「…私も…お漏らししちゃった!!小学4年生にもなってお漏らししただなんて悠里ちゃんに知られたら、嫌われるんじゃないかって…」
「え…あっ…」

あまりに唐突で意外な事実に戸惑う悠里。
パンツの中の大惨事のことなんてすっかり忘れていた。

「電車でファンタ飲みすぎたのが悪かったのかな…。おしっこ我慢できなかった」
「…じゃあ、ずっとこっちを向かなくなったのは…」
「ごめん。必死でおしっこ我慢してたんだけど…だめだった。それに最後の最後でリフト止まるんだもん」

そういうと、麻里は涙目のままぺロッと舌を出して笑った。
そんな麻里のおちゃめな表情に一気に安心感が出たのか、とても明るい笑顔を麻里に返す。

(よかった…嫌われてなかった!!)

麻里は近づいて悠里の手を握った。

「ダメだよ!私…臭いよ…!!」
「うーん、私も臭いと思うけど…」
「麻里ちゃん…」
「お腹が弱い事なんて、別に悪いことじゃないよ!私も昔すごいお漏らししちゃったことあるもん」

麻里は笑いながら悠里に優しく言葉をかける。
そんな麻里に、悠里は一番大切な質問を投げかけた。

「あの…麻里ちゃん…これからも友達でいてくれる?」

真っ赤になってうつむきながら問いかける悠里に

「もちろん!えっと…これからもよろしくね…ってなんか変な感じ!」
「ありがとう!!麻里ちゃん!!」
「えっと…ところで…悠里ちゃん、代えのパンツって持ってる?私、これしか無くて…」

悠里のポシェットには3枚もの代えパンツが入っている。
いつお漏らしで汚してしまっても大丈夫なように、保険的に持ち歩いているのだ。

「うん。あげる!」
「ありがとう!あっちで着替えよう!汚れた洋服も水道である程度綺麗にできるから!」

二人はお互い大きなお漏らしの痕を付けながら、仲良く手をつないで公衆便所へと入っていった。
お互い何の引け目も無くなった今、固い絆で結ばれた友情が芽生え始めていた。

(完)


講評

 なるびさんから初めてのろりすか小説を投稿していただきました。キャラクター設定、排泄描写とも見事な作品をいただきましてありがとうございます。

メインヒロインの悠里ちゃんは非常におなかが弱い設定ということで、本編中でも6回の下痢便シーンを見せてくれました。たまたま一度だけ下痢をするのではなく、下痢が日常となっている女の子というのは背景設定だけでも楽しめますね。生まれつきおなかが弱いのではなく、小学校に入ってから急に下痢ばかりになったということで、1年生の頃は体質の変化に戸惑い、おもらしも多く大変だったのではないでしょうか。この頃の話もぜひ読んでみたいですね。

 お友達の麻里ちゃんは現在なるびさんのサイト連載中の作品のヒロインで、最後はともにおもらしをして友情を温め合う綺麗な終わり方になっています。本文中では麻里ちゃんも下痢おもらしをした過去があると示唆されており、こちらもどんな内容なのか気になりますね。

 この後牧場に着いた悠里ちゃんが絞りたての牛乳を飲んでさらに凄まじい下痢になり、トイレのない野外で何度も排泄した上、帰りの電車の中でも下痢が治らずおもらししてしまう姿が目に浮かびますが、それはまた別の機会に書いていただけると思います。
 悠里ちゃんは今後もろりすかヒロインとしてなるびさんのサイト、または投稿作品などで大活躍する予定だそうです。今後も一層のご活躍を期待しております。


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