ろりすかZERO vol.2「修学旅行 〜新聞記事の向こうに〜」
その4 拡散する悲劇
仲原仁美(なかはら ひとみ)
14歳 桜ヶ丘中学校3年2組
体型 身長:148cm 体重:47kg 3サイズ:77-51-80
ひかりのクラスメート。平均的な容姿だが、短めの二本の三つ編みと舌っ足らずなしゃべり方が特徴。
香月幸華(こうづき さちか)
14歳 桜ヶ丘中学校3年2組
体型 身長:158cm 体重:50kg 3サイズ:82-51-81
ひかりのクラスメート。性格は活発にして饒舌。人当たりがよいクラスの人気者という存在。やや茶色がかったロングヘアである。
笹山恵美(ささやま めぐみ)
15歳 桜ヶ丘中学校3年5組
体型 身長:162cm 体重:50kg 3サイズ:87-56-88
モデルのような茶色のロングヘア。中学生には過ぎるほどの発育を誇るグラマー少女だが、その過信からくるのか性格は自分勝手である。
落ち着いてトイレの中を見渡すと、お腹やお尻を押さえて我慢している子達から離れ、一番奥の隅で立ち尽くしている少女が目に入った。
「美奈穂ちゃん……!?」
「っ……ひかりちゃん……」
美奈穂に駆け寄るひかり。
目の前まで来て驚いた。美奈穂は、スカートを脱いで下半身裸であった。そのスカートを片手に持ち、恥ずかしげに股間を隠している。
「美奈穂ちゃん…どうして……」
「パンツもスカートも汚しちゃって……洗おうって思ったんだけど……」
そう言って美奈穂は言葉を詰まらせた。よく見ると、紺色のスカートにうっすらと暗い色になった部分が見える。一生懸命拭き取ったものの、染みは抜けなかったのだ。
さらにパンツは持っていなかった。前から後ろまで、全面真っ茶色に染まってしまったパンツ。とても持っていられるものではなかった。溜まった汚物だけを便器に捨て、トイレの衛生箱に投げ込んでくるしかなかった。
「早く出ろって……追い出されちゃったの……ぐすっ……」
「……そんな、ひどい……」
「ひかりちゃん、えっと……あのね……」
不安そうに言葉をつなげる美奈穂。その口調はいつもより幼児化しているようだった。
ひかりは、そんな美奈穂の心中を察し、やさしく、できるだけ平静を保って、声をかけた。
「あっ、うん。着替え、私が取ってくるから」
そう言ってひかりはトイレを出て行った。
お腹を押さえた少女達の行列は、トイレの外まで伸びていた。
その数は20人を超える。
全員が無事排泄を済ませることなど不可能なことは、誰の目にも明らかだった。
「ねぇ、空けてっ、早くっ!!」
……どこかの部屋から声が聞こえる。
おそらく、部屋のトイレを巡って熾烈な戦いが繰り広げられているのだろう。
そんな部屋の前をいくつも通り過ぎ、ひかりは自分の部屋にたどり着いた。
美奈穂の部屋の子に事情を説明して彼女の着替えを持ってくるより、自分のを貸してあげたほうがいいと判断したのだ。
トイレに向かう時は無限回廊のように長く感じたが、普通に歩けば1分とかからない道のりだった。
(どうしよう……みんな変に思ってるかも)
何にも言わずに部屋を飛び出してしまったのである。
(やっぱり、からかわれたらちょっとイヤだし……)
やむを得ず学校でうんちをしてしまうことが多いひかりだが、やっぱりその辺のことは恥ずかしい年頃である。クラスの友達、それもこれから数日間同じ部屋で生活する子達に、排泄のことでからかわれるのはさすがに耐えられなかった。
(……でも、いまさらどうしようもないし……)
ひかりは相当の覚悟をして部屋の扉を開けた。
しかし、ひかりのちっぽけな心配など吹き飛んでしまうほど深刻な事態が、部屋の中では発生していた。
「ねぇ、仁美ぃ……まだなの?」
「まだダメだよぅ……んっ……」
ビチュビチュビチュッ! ビシャッ!!
「………………」
部屋に入るなり聞こえてきた声と音に、ひかりは言葉を失うしかなかった。
この部屋の中でも、あのトイレと同じような悲惨な状況が展開していたのだ。
「幸華ちゃん……?」
「あっ……ひかり……大丈夫なの? みんなお腹痛いって…くぅっ!!」
「わ、わたしはさっきその…それより、幸華ちゃんのほうが……」
「うん……まだ大丈夫だよ…けど仁美がずっと……。」
トイレの中にこもっているのは仁美のようだ。舌っ足らずな口調で、いつもぼけ〜っとしたスローペースなイメージがある子だが、生理現象のほうはそうは行かないらしい。
ビチッ……ブブブッ!! ブボッ!
ブシュゥッ! ビッ、ビィィィッ!!
ドアをがっちり閉めた部屋のトイレから、激しい排泄の音が響いてくる。さっきのトイレでのことで嗅覚が麻痺しているのか、臭いはそれほどきつくなかったが、彼女も下痢なのは見なくてもわかった。
「仁美……お願いだよ……早く替わって…!」
「うん……がんばってるんだよぉ……でも……んぅっ……」
ブチュチュ……ブリッ!
ビビビッ! ブシャァァァッ!!
トイレからは変わらぬペースで排泄の音が続いていた。
「早く……お願いだからぁ……」
幸華の声が泣き声に近くなってきた。もう相当辛いのだろう。でも、ひかりにはただ見ている以外には何もできなかった。
「あ、あの私、用事があるから……」
ひかりはそう言って幸華のもとを離れ、自分の荷物を探ってジャージと下着を取り出した。美奈穂ならこのサイズで問題ないはずだ。
今もトイレの中で寂しく待っているであろう美奈穂の辛さを思い、ひかりは急いで立ち上がり部屋を出て行った。
「仁美ぃ……早くぅ……」
残された幸華の声が、だんだんと絶望的なものに変わっていった。
「あっ……ひかりちゃん……」
ひかりが現れるのを、美奈穂は首を長くして待っていた。トイレの入口にひかりの姿が見えた瞬間、彼女は目を輝かせた。
「待たせちゃってごめんなさい……ほらこれ、着替え」
そう言ってひかりは着替えを手渡した。
「これ……ひかりちゃんの?」
「うん……その方が大騒ぎにならないと思って……一応、下着も…」
ひかりは軽くうなずいて説明した。
「ありがと……ちゃんと洗って返すから……。あ……でも汚れてるかもしれないし……新しいので返した方がいいかな…」
大げさな反応をする美奈穂に、ひかりは押しとどめるように言った。
「ううん、普通に返してくれればいいから…」
「あ……ありがと……」
美奈穂は顔を赤くして後ろを向き、着替えを身につけ始めた。
その時、甲高い悲鳴がトイレの中に響いた。
「もう、ダメぇぇーっ!!」
そう叫んでしゃがみこんだ少女が一人。さっき横入りをかけようとした、恵美だった。
崩れるように足をかがめ、さらにお尻をぺたんとトイレのタイルに密着させてしまった。その衝撃で、便意をこらえ続けていた肛門はいともあっさり決壊した。
ブボボッ!!
ブチュブチュッ!! ブニュルルッ!
低くくぐもった音が響きわたった。発生源はもちろん、恵美のお尻からだ。
「いや、ダメ、出ないで……」
恵美は必死で肛門を締めようとするが、やわらかく細長いうんちはその隙間から押し出されるように、彼女のパンティへとあふれ出していった。
ニュルゥゥゥッ……ブピッ!
ブビュビュビュ…ビビュ……ビチィッ!
「いや……うそ……アタシがこんな……ウソよ、ウソ……」
必死に現実を否定する恵美。しかし彼女をあざ笑うかのように、肛門からの噴出は徐々に液状のものとなり、勢いを増していった。
ブジュッ……ビュブブッ!! ビチュ……
ブブブブリリリリリッ! ビピィッッ!
ビチャビチャ……ビチュ…ブボボボボッ!
「だめ……いや・…そんな……いやぁ……」
恵美の声は哀れというほかなかった。ひかりは彼女を見て、同情を禁じえなかった。
しかしその場にいた生徒の多くはそうではなかった。割り込もうとした彼女の味方は、ほとんどいなかったのだ。
「ひかりちゃん……行こ」
着替えを済ませた美奈穂が、寂しそうにつぶやく。言わば美奈穂は、恵美のせいでおもらしをしてしまったのだ。彼女の気持ちを思うとやりきれない。
ひかりはその言葉にただうなずくしかなかった。
行列はさらに増えていた。各部屋で限界近くなってから来る少女もおり、その我慢の限界もさらに近づいているのであった。